しかしここに来て、日本でも労働力人口が減り始めて、極端に人が足りなくなってきて、経営者は効率以上に事業継続を、より重要に考えるようになりました。そこで、ITやロボットを積極的に入れていこうという流れになっているのです。人手不足は危機と思われていましたが、実は人員を削減する千載一遇のチャンスになりうることがわかってきたわけです。これから、日本企業の生産性は大きく向上すると思います。
エリート職種の多くが消滅の危機に
中原:その典型例が、メガバンクの人員削減なのでしょう。日本の金融機関は欧米の金融機関に比べて人件費などのコストが高く、生産性の改善が課題となっているといわれて久しいですが、これからはRPAやAIの導入によって人件費を圧縮する一方で、生産性を引き上げようという流れは不可避のようですね。
伊東:そのとおりです。銀行のバックオフィスでは多くの行員が働いていますが、行員の仕事の多くは同じ作業を繰り返すものです。それであればRPAで十分に対応できるので、その結果、メガバンクでは万単位の人員整理につながっていくのです。多くの人たちが「メガバンクも大変だな」と他人事のように思っているかもしれませんが、実は、こうしたメガバンクの動きは、今後の日本企業にとって貴重な先行事例となっていくでしょう。
中原:AIがかかわるのが頭脳の領域であることを考えると、たとえ高度で専門的な知識が必要な職業であったとしても、将来がずっと保証されるということはありません。AIの進化によって専門職の人々の仕事環境は様変わりし、10年後には今の仕事の半分はなくなっているかもしれないからです。医師にしても弁護士にしても税理士にしても、これまで成功を収めてきた人々ほど、そういった危機感を強く持っていて、将来の対策をシミュレーションしているといいます。
伊東:そのとおりです。AI社会の到来によって、医者、弁護士、会計士などエリート職種とされてきた仕事の多くが消滅の危機にさらされるでしょう。
AIの凄さを示す事例には事欠きません。たとえば、20人の検事が6カ月もかけて見つけ出した不正の証拠を、AIはわずか20分で発見してしまったといいますし、優秀な弁護士が1日かけて見つけた契約書の不備を、AIはものの数秒で見つけ出してしまったといいます。
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