17歳バレー部員が自死した高校の杜撰な対応

校長は、息子の遺書を「メモ紙」として扱った

彼らが立ち上がれたのは、何よりも日本の社会全体が指導者のパワハラに敏感に反応し始めたからだ。選手の尊厳を傷つける暴力や暴言に、人々ははっきりと「NO」を突き付けている。

デジタルでつながるこの情報化社会に、地方と中央の温度差など言い訳にならない。しかも、ここ数年で中学生のいじめ自殺が連続した同県は、多くを学んでいるはずだ。

さらにいえば、文科省が各都道府県教委へ通達している「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針(改定版)」の【遺族との関わり】には、「遺族が背景調査に切実な心情を持つことを理解し、その要望・意見を十分に聴き取るとともに、できる限りの配慮と説明を行う」と明記されている。

こうした中、両親は、足元の不穏な動きに危機感を募らせている。学校側がこの顧問をバレーボール部に復帰させたうえで、春高バレー予選会に出場させようとする動きがあるというのだ。

両親は「息子のチームメートたちには春高に出てほしいが、顧問を再び部活動にかかわらせるのは、やめてほしい」と学校に申し出ている。しかし、学校側が代替の指導者を県バレー協会に要請したというような報告は受けていないという。

パワハラ死ではないのか

両親をサポートする草場裕之弁護士はこう指摘する。

「この事件は、17歳の高校生が部活動でパワハラによって自殺に追い込まれた指導死であり、パワハラ死だと思います。県教委対応にも問題があります。県教委は、前任校での体罰を元バレー部員に訴えられて係争中であることについて、裁判で結果が出ていない処分保留の状態だと言っています。しかし、暴行の嫌疑がある以上は部活現場からは隔離すべきでしたし、一審判決で暴行の一部が認定された時点で部活指導を停止させるべきだった。適切な人事が行われていれば、彼の人生は続いていたはずだ」

このような事態にもかかわらず、学校側、校長は危機感のない対応に終始している。

学校における体罰やパワハラを長年取材してきた筆者には、校長がこう考えているように思えてならない。「かつて、確かに顧問は体罰をしていたが、今は言葉で指導しているだけであり、手は出していないじゃないか。成長しているではないか」と。

しかし、「いじめ自殺」は、肉体的な傷を負ったというだけでなく、心に傷を負った末に起きている。激しい体罰が介在しなくても、少年たちは死を選ぶ。「パワハラ」には人から生きるエネルギーを奪い、正しい判断力を奪う恐ろしい力がある。そしてスポーツ界がパワハラの温床になりやすいことは、レスリングや日大アメフト問題など、昨今続く不祥事も教えてくれていたのではなかったか。

桜宮事件から5年が経つ。あのとき「二度とこのような痛ましい事件を起こしてはならない」と学校現場とスポーツ界は誓ったはずだ。そのときの経験が、活かされるときは来るのだろうか。

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カーリング人気萌芽の時代から、平昌五輪での銅メダル獲得まで戦い抜いてきた著者。リーダーとして代表チームを率いつつ、人生の一部としてカーリングを楽しめるにまで至った軌跡や、ママさんカーラーとして子育てで得た学びなどを語る。