日本の部活を覆う「ブラックな忖度」という罠 内田良氏×島沢優子氏が語る(前編)

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生徒も教師も苦しいという「ブラック部活」について聞く(撮影:尾形文繁)
活動時間が長い。休みがない。顧問の先生の指導が理不尽で過度に厳しすぎる――。本来は楽しく自主的に取り組むべきである部活動に苦しむ生徒がいる一方で、教師側は指導や引率のため土日も休めず縛られている。
生徒も教師も苦しいというブラック部活。その実態を『ブラック部活動 子どもと先生の苦しみに向き合う』で解き明かした名古屋大学准教授の内田良氏と、『部活があぶない』でブラックになった背景や改善策を考察したフリーライターの島沢優子氏が、部活動の現在地と未来について大いに語り合った。

自主的だから過熱する。自主的なのに強制される

島沢優子(以下、島沢):本の中で「部活動は、自主的だから過熱する。自主的なのに強制される」という部分が印象に残りました。自主的というのは、教師と生徒、両方を指していますね? 本来、自主的であることは教育上よいことなのに、過熱というネガティブな方向に向かう、と。何をきっかけに、この結論に達したのですか?

内田良(以下、内田):僕はもともと、部活動のことにそれほど関心はなかったんです。人の苦しみに寄り添いたいという気持ちや、何が苦しみの根源なのかという探究心はあったので、柔道やスポーツの事故、あるいは体罰について調査し、発信してきました。

島沢:ご自身は何部でしたか?

内田:一応ですけど、中学校のときは卓球部に所属していました。部活動が強制参加で、いちばん緩いところを探したらそこだったんです。だから部活動が楽しいなんて想像もつかなかった。

島沢:ところが、楽しいをはるかに通り越してというか、熱が上がりすぎている現状が見えてきました。昨年度のスポーツ庁の調査では、半数以上の中学校の運動部が週に6日以上活動しています。文部科学省が定める運動部の休養日の設定例は「中学校は週2日以上」なのにです。

内田:まったく守られていませんね。僕は先生方の声を聴いてきたわけですが、楽しいという域をはるかに超えて、過熱する現状がわかってきた。そういう中で、どうも部活って、苦しいというだけでは論じきれないぞ、と。

強制されるっていうことは、本来ネガティブなことですよね。他方で、楽しいから過熱していく、ハマっていくというようなポジティブな側面もある。島沢さんも『部活があぶない』の冒頭で強調なさっているように、多くの人にとって部活動はいい「思い出」なんです。でも、その制度設計がないまま学校教育のグレーゾーンに置かれている。

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