日本の部活を覆う「ブラックな忖度」という罠 内田良氏×島沢優子氏が語る(前編)

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島沢:日本体育協会の調べで、学校管理下の熱中症による死亡事故で肥満傾向にあったケースが71%と大きな割合を占めていたのに、まったく周知されていませんでした。それを拡散してくださったのが先生ですよね。柔道の重量級やラグビーをやる体の大きい子は、熱中症にかかりやすいという記事、感動しました。柔道関係者の方たちがすごく感謝していました。本当に知らなかった、と。

内田:ちなみに、僕に情報をくださる学校の先生たちは、生徒のこともちゃんと心配しています。

島沢:だと思います。部活がブラックなのは、顧問の先生の指導やマネジメントに問題があると考えていましたが、それだけではなかった。

教師と生徒、両方の視点で問題を掘り下げる必要がある

内田:そうです。半分の側面でしかなかったわけです。今後は、教師と生徒、両方の視点から部活動問題を掘り下げていかなくてはなりません。ようやく問題の入り口に立ったのかもしれません。

島沢:最初の質問の半分「自主的なのに強制される」も、生徒と教師の両方に当てはまりますね。

内田:先生たちにとって、平日の部活指導はギリギリ乗り越えられるかなと思います。実際に苦しい声で多いのは、やっぱり土日ですね。

島沢:家族とも過ごせません。

内田:そこをいちばんブラックって言っているんだと思う。そこの強制。特に先生です。

島沢:どの競技も大会が非常に多いです。中体連も高体連も。練習試合は放課後でもできますが、公式戦は土日になります。

内田:だから大会を規制しなきゃいけない。回数ですよね。何回参加するか。別に大会の数そのものはたくさんあっていいんでしょうけど、参加回数を規制したほうがいいかなと思います。

島沢:なるほど。そうすれば、大会が大規模化して運営に四苦八苦することもなくなる。

内田:健康上もやりすぎです。18歳以下は規制することを本当は考えないといけないんだけど、部活動に関しては野放し状態になっています。

島沢:顧問を複数担わなければいけないという話もよく聞きます。中学校など、少子化で部員数は減るけれど、部そのものは残るので誰かが顧問をしなくてはいけない。でも、生徒数が減っているから教師の数は減っている、と。同じような話で、2020年に学習指導要領が変わって授業のコマ数が増えるけれど、教師の数が増えるわけではない。授業でも部活でも、学校の先生はどんどん追い詰められませんか。

内田:授業の場合はコマ数が増えたら当然ながら誰がそれを負担するんだっていうのが、一応議論の対象にはなるわけです。でも、部活動の場合は、時間や担当する部が増えても、じゃあ誰が指導するんだ、人を追加するかって話になるのか。

島沢:ならないですね。で、そこで出てきたのが外部指導員などの案です。ここからは、今後の部活動のあり方を聞かせてください。

(後編に続く)

島沢 優子 フリーライター

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しまざわ ゆうこ / Yuko Simazawa

日本文藝家協会会員。筑波大学卒業後、広告代理店勤務、英国留学を経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。主に週刊誌『AERA』やネットニュースで、スポーツや教育関係等をフィールドに執筆。

著書に『世界を獲るノート アスリートのインテリジェンス』(カンゼン)、『部活があぶない』(講談社現代新書)、『左手一本のシュート 夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)など多数。

 

 

 

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