公立小中学校の教員はブラック勤務が前提?! 週60時間以上働いても残業代は支払われず
3月末に取りまとめる実行計画に向け、議論が加速してきた政府の働き方改革実現会議。最大の目玉である「36協定の見直し」では、罰則規定のある残業時間の上限規制をめぐり労使の議論が白熱している。焦点は、一時的な業務繁忙期での上限時間をどうするか。罰則規定付きで上限を月60時間、月100時間などの案が出ている。
一方、報道ではあまり目立たないが、現在の労働基準法では残業時間上限規制の適用除外対象となっている建設業やトラック運送業、研究開発業務について今後どうするかも争点となっている。こうした中、事実上「残業代不払い」で長時間残業を強いられている公立小中学校の教員の不満は高まるばかりだ。彼らもまた残業時間上限規制の適用から外れる状態にあるが、今回の働き方改革実現会議では見直しの対象外だからだ。
昨年、ネット上で「ブラック部活」の議論も盛り上がった教員の過酷な残業状況。その実態はどうなっているのか。ここでは昨年12月に連合総合生活開発研究所がまとめた「日本における教職員の働き方・労働時間の実態に関する研究委員会報告書」(以下、研究委員会報告書)を基に見ていこう。
「教員の勤務の特殊性」から残業代不支給に
まず学校現場の労働時間の特殊性については、その成り立ちについて理解しておく必要がある。戦後の1948年に公務員の給与体系が変更された際、教員については「勤務時間を測定することは困難」などの理由から、一般の公務員より1割増額した給与額に切り替えるとともに、超過勤務手当を支給しないことが決められた。だがその後、教員の1割高い給与水準が廃止されたため、多くの都道府県で残業代を求める訴訟が起こされ、「超勤問題」として社会問題化した。
紆余曲折を経て1972年に施行されたのが、「給特法(きゅうとくほう)」と呼ばれる「国立の義務教育諸学校等の教諭等に対する教職調整額の支給等に関する特別措置法」だ。これは教員には超過勤務手当てや休日給を支払わず、代わりに教職調整額を支給するというものだ。教職調整額は棒給月額の4%。これは1966年度の勤務状況調査で当時の教員の月平均残業時間だった8時間分の給与に相当するものだ。逆に言うと、教員には8時間を超える分の残業代はいっさい払われないことを意味する。昨今、ブラック企業などで採用され、その違法性が指摘されている固定残業代制度のようだ。
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