日本の部活を覆う「ブラックな忖度」という罠 内田良氏×島沢優子氏が語る(前編)

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島沢:ネガとポジが同居しているからこそ、過熱を解消できないということですね。

フリーライターの島沢優子氏(撮影:尾形文繁)

内田:このネガとポジの同居はいろいろあると思うのですが、部活が嫌で嫌で仕方ないという教師と、他方で楽しく熱中しながらそこから逃れられない教師がいる。この2つを見ないといけないんだろうなと思っています。

島沢:なるほど。でも、先生のおっしゃるとおりグレーゾーンなので、誰もアンタッチャブルな世界なので管理しづらい。

内田:ひとつ言いたいのは、「部活動は自主的なものだからそれでいいんだ」と放置しないでほしい。部活動顧問という指導者だけではなく、学校長、あるいは教育行政が、どうやってこの楽しくて大きくなっていく部活動に歯止めをかけるか、管理するか。そこが大事なんだということを今回の本ですごく強調したかった。

3者で苦しい道へと進んでいる

島沢:以前、内田先生に聞いたお話で、朝練習を禁止にしたんだけど、どうしてもやめられないというケースが印象に残っています。内田先生がなぜなのか?とその部活の先生に尋ねると、先生は「生徒がやりたがっている」と言い、生徒に聞くと「先生がやらせたがってる」と答えると。

内田:いつの間にか、教師と生徒がお互い首を絞め合いながら傷つけ合っていくように見えました。しかもそこには、島沢さんもご指摘のように、保護者の「部活熱」が大きくかかわっています。生徒、教師、保護者の3者でお互いに苦しい道へと進んでいる。

島沢:それって「ブラックな忖度(そんたく)」ですね。

内田:そうそう。ブラック忖度(笑)。島沢さんは僕と対照的な部活人生ですよね。大学バスケットでインカレ優勝でしょう?

島沢:補欠ですよ。私がスポーツエリートだったら、部活問題には取り組めなかったと思います。選手としてポンコツだったから、生徒の苦しみに共感できました。

内田:以前、桜宮の事件(大阪市立桜宮高校バスケットボール部員が顧問の暴力等を苦に自殺)についてのルポ(『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実』)も書かれていますね。

島沢:2013年1月に事件が発覚してすぐに取材を始めました。部活のせいで生徒が死ぬなんてありえないと思ったからです。本が出たのはちょうど三回忌にあたる2014年末です。

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