さらに、卓球という新しい市場に参入する意義について、安田氏はこう話す。
「近年のスポーツ業界は不祥事が多いですが、これは各スポーツのガバナンス(統治)が確立されていないことが問題としてあります。
まさにガバナンス欠如によるクライシス(危機)に陥っている。だから『本来はこうしたほうがいいよ』という成功事例を見せてあげることが必要だと感じています。その中で、卓球という新規市場参入のお話をいただいた。
Tリーグという日本の新しいリーグを盛り上げることにより、スポーツ界のベストプラクティス(好事例)を生み出すことができるのではないか。それを他のスポーツにも共有することで、業界を良い方向に導けるのではないか、と思ったんです。ドームとしてはそこに社会的意義を見いだしました」(安田氏)
それは「スポーツを通じて社会を豊かにする」「社会価値の創造」という理念を掲げたドームならではの考えだ。
ただ、スポーツを通じた社会貢献活動を積極的に実施するためには、それに賛同してくれる企業やアスリートの参加が必要不可欠。だからこそ、選手やチームと契約する際は、自社の広告を宣伝するための「知名度」より重要視するポイントがあるという。
「僕らはこれまでいろんなスポーツに協賛していますが、そのチームや選手が有名だから契約する、ということは基本的にありません。どのようなメッセージ性を持っているのか、一緒に取り組んでいくことで、何に対してどんなことを発信できるのか。そういうところを見極めてから契約するかどうかを判断します。
また、社会をより良くするためにお互い汗をかきながら取り組めるかどうか。そこもパートナーを選ぶ際の大きな要素です」(安田氏)
「どんな観戦スタイルが定着するか」がカギ
Tリーグには「世界一の卓球リーグを作る」という理念がある。
参戦する選手を見ると、平野美宇(日本生命レッドエルフ)や水谷隼(木下マイスター東京)、10月5日(金)に正式に参戦を発表した石川佳純(木下アビエル神奈川)など、国内のトッププレイヤーが集結。さらに強豪・中国や欧州のトップランカーも続々と参戦を表明している。
選手だけを見れば、半世紀以上の歴史を誇るドイツのプロリーグ「ブンデスリーガ」にも引けを取らない。だが、リーグを継続的に盛り上げるうえで「エンターテインメント」としての要素もなければ、開幕直後の一時的なブームが過ぎ去ってしまうと卓球を愛する「ファン」しかやって来なくなるだろう。そこで安田氏は、「スポーツの本質は試合を観ることだけではない」と提言する。
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