「北海道のコメダ」が抱える地元定着への課題 熱しやすく、冷めやすい道産子との向き合い方

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「新しもの好き」だが「熱しやすく冷めやすい」という道産子気質。だが近年の成功事例はある。たとえば北海道移転14年で、すっかり定着したプロ野球の北海道日本ハムファイターズだ。筆者はかつて週刊誌の取材で、同球団に密着取材した。北海道大学の教授や広告代理店の元社長にも話を聞いた。その取材結果では、次の3点が成功要因だと考える。

(1)「新しい球団」を前面に打ち出した

(2)「北海道民」に寄り添う姿勢を鮮明に

(3)特に女性ファンの掘り起こしに注力した

それぞれ簡単に説明すると、(1)は、それまでの球団事務所が東京・六本木にあり、東京ドームを本拠地としていた同球団が、2004年に「東京からプロ野球球団が移転」ではなく、「北海道に新球団が誕生」を強調した。つまり新しもの好きの道産子に訴求したのだ。

(2)は、球団マスコット「B・B」(ブリスキー・ザ・ベア)の背番号「212」は2004年移転当時の北海道の市町村の数だった。この背番号に象徴されるように「札幌」ではなく、「北海道」を打ち出し、道内各地のファンに「地元の球団」をアピールした。

(3)は、女性を優待割引する「レディースデー」など、イベント訴求をいち早く導入した。その結果、2000年代半ばから、夜の試合観戦に向けて、夕方になるとユニフォーム姿で地下鉄の駅に向かう女性ファンが続出。現在、ファンクラブの女性会員数は4割を超えた。

球団も喫茶店も「時間消費型」ビジネス

「プロ野球球団と喫茶店は違う」と感じるかもしれないが、筆者は似ていると思う。どちらも「一般消費者を相手にしたビジネス」で、さらに突き詰めれば、「時間消費型ビジネス」だからだ。消費者に訴求して、ファンになってもらい、繰り返し来場・来店してもらうのをめざす――のも似ている。

「東札幌五条店の1人用座席」(筆者撮影)

ファイターズの手法で興味深いのは、道民が「冷めない」ために、次々に手を打つこと。コメダの事例で参考となるのは、たとえば2017年に始めた名古屋地区での取り組みだ。

「コメダ部」という部を設けて、ふだんは違う店に通う常連客同士をつなげ、ファンコミュニティを実施する。数カ月に一度、「季節のシロノワール 試食付き座談会」のようなイベントを開催して一堂に集め、意見交換をしてもらう。「コメダ嫌い」ではなく「コメダファン」という“ホーム”な活動だが、待ちの姿勢ではなく消費者意識を探りにいっているのだ。

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