茨城でスタバとコメダを圧倒する名店の正体 サザコーヒーの企業経営はここまで徹底する
昔も今も「カフェの起業」が人気の理由
先日の取材時に、上場企業の社長が「昔と今とでは“出世”の基準が変わった」と話していた。最近よく聞く話だが、目の前で聞くと実感が増す。その真意は、(1)同じ会社で昇格する“出世”、(2)独立起業して経営者になる“出世”、(3)好きなことを仕事にしてワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)をめざす“出世”もある――という意味だ。
この発言を聞いて思ったのは、昔も今も起業先として人気の「カフェ経営」だ。昭和時代には、「喫茶店のマスター(またはママ)になりたい」と独立する人が多く、現在も「カフェのオーナーになりたい(またはバリスタやパティシエで独立)」と起業する人が多い。
なぜ、いつの時代も人気業種なのか。前述の(2)(3)を満たすことができ、小さい店でも「一国一城の主」になれるのが大きい。昭和時代には認知されなかったコーヒー職人である「バリスタ」も、お菓子職人である「パティシエ」も若者がなりたい職種となった。
一見、楽しそうなカフェ経営だが、実は長続きする店は少ない。昔から飲食店は開業も多いが廃業も多い“多産多死の業態”だ。カフェに関しては業界関係者の間で「3年持つ店は半数」ともいわれる。理由はさまざまだが、経営面では以下の3点が不十分だ。
(1)利益率の高い商品は何で、どうやって売れ筋商品に育て上げるか?
(2)居酒屋に比べて客単価が低いカフェの「客単価を上げる工夫」をしているか?
(3)FLRコスト(F=原材料費、L=人件費率、R=家賃比率)を7割未満にしているか?
カフェ業界の、志ある40代や30代からは「同業者には『好きなコーヒーとかかわっていれば、あまり売り上げが伸びなくても(従業員なら報酬が安くても)いい』という考えの人が多い」という話も聞く。その姿勢では、中長期的な店の持続が厳しくなる。地元に、経営ノウハウが確立している大手チェーン店が進出すると影響を受けやすいのだ。
そこで、拙著『20年続く人気カフェづくりの本 茨城・勝田の名店「サザコーヒー」に学ぶ』でも詳しく解説している、茨城県の「サザコーヒー」(サザ。本店はひたちなか市)の事例を紹介したい。同県内に10店舗を展開し、近年になってひたちなか市に進出した「スターバックス」や「コメダ珈琲店」より集客する“茨城最強のカフェ”だ。県外では首都圏にある3店舗――JR品川駅構内、同大宮駅構内、東急二子玉川駅前の店――が、いずれも駅ビル激戦区の中で営業を続けてきた。
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