茨城でスタバとコメダを圧倒する名店の正体 サザコーヒーの企業経営はここまで徹底する
前述のJBCでは6人全員がゲイシャ種の豆を使い、プレゼンテーションした。専門誌『カフェレス』11月号((旧誌名『カフェ&レストラン』)でも、次のようにレポートされた。
「JBC2017決勝は、出場する6名のバリスタ全員がゲイシャを用いて競技するという前例なき戦い、見物の競技会となった。競技で披露されたのはエチオピア、パナマ、コスタリカ、ポンジェラスの、それぞれの生産国のゲイシャ6種だ」(※記事の冒頭部分を抜粋)
1500円のコーヒー豆が、月に1000個売れる
サザコーヒーは南米コロンビアに自社農園も持ち、同農園のコーヒー豆も含めて、80種類以上のコーヒー豆を店頭とインターネットで販売する。中でもユニークなのは、水戸藩主の7男で、江戸幕府最後の将軍・徳川慶喜にちなんだ「徳川将軍珈琲」だ。サザで焙煎技術を学んだ慶喜の曾孫・徳川慶朝氏(今年9月に死去)が監修し、パッケージをよく見ると、慶朝氏の焙煎姿の写真もデザインされている。
コーヒー豆は200グラムで1500円もするが、全店合わせて1カ月に1000個以上も売れる超人気商品なのだ。
これ以外にこだわりのコーヒー豆を多数持ちながら、地元のイベントには惜しみなく振る舞う。たとえば、本拠地・ひたちなか市で行われる一大イベント「勝田全国マラソン」ではブースを出し、全国から2万人近くが参加する出場ランナーに向けて、1日に3000杯を無料提供する。ランナー全員がコーヒーを飲むわけではないが、大会名物の1つだ。
サザコーヒーも、昔は課題があった。今でこそきちんとしている店舗スタッフの服装も、2001年ごろ、夏場はTシャツにビーチサンダルを履いて接客する従業員もいたという。当時コロンビアでの研修を終え帰国した太郎氏が、これを見て仰天。コンサルタントの指導を受けるなど、品位ある服装に戻し、接客面の向上を図った。かつては従業員の離職も目立ったが、バリスタが全国大会で活躍し始めると「目標」ができ、辞めなくなったという。
JBC大会の翌10月、渋谷でサザコーヒーが主催したイベントに出席した筆者は、同大会の優勝者・石谷貴之氏(フリーランスのバリスタ)と、サザの関係者が親しげに懇談する姿を見て感心した。「ウチは情報もオープン」(鈴木氏)という言葉の裏付けを感じたからだ。
長年、企業現場を取材してきたが、自社に問題があった場合、良識ある経営者や役職者は「ふつうの会社になりたい」と話す。この場合の「ふつう」は平凡ではなく、きちんした振る舞いができる、という意味だ。定期的に大企業の不祥事が明るみになるビジネス業界――。誰もが利用するカフェの、地方店の実例から学ぶことがある。
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