ベーゼンドルファーのピアノは何が違うのか ヤマハ傘下の世界3大ピアノメーカーの今

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ベーゼンドルファーの魅力とはいったいどこにあるのだろう。何が「ベーゼンドルファー・マニア」とまで呼ばれる熱烈なファンやユーザーを生み出すのだろう。

ベーゼンドルファーの本社(写真:ヤマハ)

"ベーゼンドルファー使い"として知られるピアニストの三輪郁氏はその魅力を「オーケストラに例えるとウィーン・フィルみたいな感じですね。倍音の響きがとても良くて、弾いていると鍵盤の上から下まで同じ方向でハーモニーを作り出せるのです。弦楽器のように、弾きようによって自分の生み出す音程が聞こえてくるし、色彩感も魅力です」と表現する。

なるほどこれは、バックハウスが愛し、オスカー・ピーターソンを魅了して、キース・ジャレットの名盤「ザ・ケルン・コンサート」にも使われた名器ベーゼンドルファーに、改めて注目してみたくなるコメントだ。

ディーラー整備への期待

そのベーゼンドルファーは、現在東京の中野坂上駅前にある「ベーゼンドルファー・ジャパン」において体験可能だ。展示されている美しいピアノの中でも装飾が施されたピアノの存在感はまさに息を呑むばかり。コンサートのためのピアノというよりも、富裕層が美しい家具をチョイスするようにして購入する姿が想像できそうな楽器の数々は、まさにウィーン伝統の美術工芸品さながらだ。

この高価で美しいピアノをどこで売るのかはヤマハにとっての大きな課題に思える。今回の買収は、トヨタがジャガーを購入するようなものだと例に出してみたが、仮にそうなったとしても、トヨタのショールームでジャガーを売ることはあり得ないことだろう。それはヤマハとベーゼンドルファーの関係においても同様で、ヤマハと同列にベーゼンドルファーの価値を伝えることは難しい。

目的を持ってショールームにやってくる顧客が購入者のほとんどだというのだから、まさにその対応が求められる。そう考えると、現在唯一の「ベーゼンドルファー・ジャパン」店舗をいかに拡大していくのかが今後の鍵に思えてくる。クルマの世界がそうであるように、ディーラーの整備こそがベーゼンドルファー飛躍のための次なる1手であると考えたい。

田中 泰 日本クラシックソムリエ協会 代表理事

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たなか やすし / Yasushi Tanaka

一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事、スプートニク代表取締役プロデューサー。1957年生まれ。1988年ぴあ入社以来、一貫してクラシックジャンルを担当。2008年スプートニクを設立して独立。J-WAVE「モーニングクラシック」「JAL機内クラシックチャンネル」等の構成を通じてクラシックの普及に努める毎日を送っている。

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