3番目の「申告」と4番目の「検証」についてはどうか。
「非核化」を実行すれば、北朝鮮はIAEAに対して、「非核化」の顛末を記した「申告」を行うことになる。「申告」の主たる目的は、「非核化」の決定が正しく実行されたか、政府の「申告」に虚偽やその他の誤りがないことを「検証」するためであり、「検証」はIAEAによって行われる。核兵器を保有しない国を含め、どの国でも核分裂性物質は厳格に管理されているはずだが、「申告」が正しく行われるとは限らない。
「検証」は高度に専門的、技術的な問題だが、その詳細について双方で決めておかないとうまくいかない。「検証」が途中で失敗し、頓挫した例はいくつもある。かつての北朝鮮やイランがそうであった。
「検証」とは丸裸にする作業
「検証」では、核兵器や関連施設の中に存在する「核分裂性物質」、具体的にはウラン235(U235)と途中で生成されるプルトニウムの増減を調べ上げ、「申告」から漏れている「核分裂性物質」はないことが確認される。
つまり、1国内の「核分裂性物質」の量がすべて、兵器用か平和利用用かを問わず、また、全工程を通して確認されるのだ。そのための調査を「査察」というが、煩雑になるのを避けるため本稿では「査察」も含め「検証」と呼ぶこととする。
たとえば、核兵器1発を解体した場合、約50キログラムのU235が取り出されるのだが、そのことが正確に記録されていること、そして正しく保管されていることを確認しなければならない。
「検証」のために、すべての関連施設は完全に開放するよう求められる。そして、壁に付着して残る物質がないかということまで調べ上げられる。
これは普通の感覚では考えられないようなことであり、いわば、他人が家の中に入り込んできて、「裸になってください」と言われるようなものだ。「検証」とはそういう世界なのであるが、それに対する理解がないと抵抗が起こるのも当然だ。だから「検証」はよく頓挫するのだ。
したがって、「検証」は円滑に実施されなくなる危険があるという前提に立って、その場合にはどう対処するかまで決めておかなければならない。
南アフリカの場合も、「検証」は何回も困難に直面したが、その都度検証チームは南アフリカ政府の全面的な協力を得たので「検証」を貫徹できたという。
今回の平壌協議に先立ち、複雑な「検証」のための作業部会を米朝間で立ち上げたことは正しいステップであった。このことには北朝鮮も同意していたはずだが、それでもポンペオ長官が提出した要求は、あまりも一方的で、多すぎると映ったのであろう。だから「一方的に強盗のように要求してきた」と非難したのだ。もっと上品な表現はあったかもしれないが、北朝鮮の気持ちは率直に表現していたと思う。
しかし、「強盗」であろうと何であろうと、「検証」を最後まで貫徹しなければそれまでの努力はたちまち無に帰する。アメリカとしては何としてでも徹底した「検証」を確保しなければならない。北朝鮮の「強盗」声明は、アメリカが交渉の中でなすべきことを実行している証しである。
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