朝鮮半島は「擬似的平和状態」に突入していく

共同宣言は具体性なく「非核化」はまだ入り口

北朝鮮の指導者が国際社会に顔を出しただけでも大きな変化。ここから先どこへ向かうのか(写真:KCNA via REUTERS)

外交官は自国の利益を巧みに反映させる文言を作り出し、合意文書に埋め込むことをもって職とする仕事でもある。その観点からすると12日にシンガポールで行われた米国のドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の会談後に公表された共同声明はいささか出来の悪い文書と言わざるを得ない。

「朝鮮半島に永続的で安定した平和の体制を構築する」などと美しい言葉は並んでいるが、最大の焦点だった北朝鮮の核兵器やミサイル問題で2人の首脳が何を合意したのか、今後どうするのかなど具体的ことがさっぱりわからないのである。ひょっとすると首脳会談ではもっと踏み込んだやり取りがあったのかもしれないが、想像のしようもない。

しかし、明確に言えることがいくつかある。1つはこの共同声明を見るかぎり、米朝間の協議はスタートを切ったにすぎないということだ。それがいつまで続くかは不明だが、最終的なゴールに到達するにはかなりの年数が必要だろう。もうひとつは米朝間の軍事的緊張が緩和したことだ。米朝間の協議が続くとともに北朝鮮が新たに核やミサイルの実験を行わないかぎり、疑似的ではあるが朝鮮半島は平和状態に入るだろう。その点だけは評価してもいいのかもしれない。

米国が主張していたCVIDが盛り込まれず

公表された共同声明はとにかく短い。日本語に訳した場合、約800字にすぎない。2002年9月に小泉純一郎首相が訪朝して金正日(キム・ジョンイル)国防委員会委員長と合意した「平壌宣言」は1300字余りだった。また今年4月27日に金正恩氏と韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が合意した「板門店宣言」は日本語にすると2200字を超える。いずれも具体的な内容を含んでいるため字数が多くなっている。字数だけを見ても今回の共同声明がいかに簡潔なものかわかる。

それに加えて具体性がない。合意内容を4項目上げているが、第1項目は「アメリカと北朝鮮は、(中略)新しい関係を樹立するために取り組んでいくことを約束する」としている。ここでいう「新しい関係」が、これまでの敵対関係を改善し国交正常化までを意味しているのかもしれないが、この文面だけでは何を意味しているか不明である。

第2項目は、米朝は「朝鮮半島に永続的で安定した平和の体制を構築するため努力する」となっている。この項目も言葉は美しいが、具体性はまったくない。しかも「努力する」という言葉によって実現性が弱められているような印象を与えている。

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