次に2つ目の「決定の実行」だ。
決定にはさまざまな内容が含まれているが、なかでも重要なことは核兵器の廃棄である。北朝鮮が何発保有しているか、また、どこに、どのような状況で保管しているか。廃棄はいつ、誰が、どこで、どの順番で行うか。廃棄した核兵器は北朝鮮内で処分するか、国外へ搬出するか。米側としてはこれらを確定する必要がある。
南アフリカの場合、自国ですべての核兵器を廃棄した後に発表したので、これらが問題になることはなかったが、これから「非核化」する北朝鮮の場合には、後で述べる「検証」においてこれらの事実関係についての情報開示が求められる。
これに対して、北朝鮮側ではアメリカ側の要求に応じることに抵抗する力が働くおそれがある。たとえば、人民軍や労働党の強硬派が、「主権」にかかわることとして説明を拒む事態である。これはアメリカとして特に知りたいことだろう。
原子力の平和利用も問題に
核兵器を製造するのに使用された施設の廃棄も重要問題だ。ウランの鉱石から核兵器を製造するまでにはかなりの数の工程がある。たとえば、自然な状態で存在するウランを濃縮すること、そのため気化などの加工が必要である。また濃縮されたウランは金属状に加工される。冷却施設や、実験場も必要だ。
アメリカは人工衛星などで関連施設の存在をある程度把握しているが、完全ではない。協議においては北朝鮮側からすべての関連施設の現状と廃棄について説明を受ける必要がある。
「非核化」の実行上、北朝鮮による原子力の平和利用も問題となる。平和利用は核兵器不拡散条約(NPT)でもすべての国に認められている権利であるが、兵器用と平和利用用の境界が明確でないことがあるので、協議の対象とせざるをえないのだ。
兵器用と平和利用用の混在はさまざまな局面で現れてくる。たとえば、ウランの濃縮は兵器のためにも、また、平和利用のためにも行われ、そのための施設は完全には分離されていない。したがって、兵器用の濃縮施設を廃棄するといっても、では平和利用の濃縮はどうするかが問題となる。
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