ジブリ高畑勲監督がアニメ業界に遺した宝物 宮崎駿やガンダム監督にまで影響を与えた
高畑監督の影響は日本だけに限らない。オランダの監督であるマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィットもその一人。米国アカデミー賞短編アニメーション賞を受賞したヴィット監督の『岸辺のふたり』を見た高畑監督がこれに感銘を受けて、長編『レッドタートル ある島の物語』が実現した。
高畑監督は本作で、アーティスティック・プロデューサーとしてクレジットされている。制作にあたりスタッフは、高畑監督と密なコミュニケーションを取ったという。高畑監督へのリスペクトが、海外にも広がっていることを示すエピソードだ。
その才能はダ・ヴィンチの如く
海外アニメーションの活性化も、高畑監督の大きな関心のひとつであった。2007年にスタートした「三鷹の森ジブリ美術館ライブラリー」は、世界の優れたアニメーションを、ジブリ美術館がセレクトして紹介するものである。
作品のセレクトに高畑監督は深くかかわり、その多くに解説文、推薦文を書いてきた。また『アズールとアスマール』のように作品の監修・翻訳をしたものもある。海外作品を評価し、その傑作を紹介する。これも高畑監督のあまり知られない業績のひとつである。
こうして見ると、数々のアニメーションの傑作を残した高畑勲監督だが、監督・演出の仕事は彼の数多くの才能とキャリアの一部といえる。
高畑勲という才能を考えるとき、レオナルド・ダ・ヴィンチが思い浮かぶ。世界的な画家として歴史に残したダ・ヴィンチは、著名な画家であると同時に発明家であり、土木設計家であり、科学者であり、理論家であった。高畑勲監督は、そこに相通じると思えるのだ。
今後、高畑勲の語ってきた言葉は、さらに大きな影響を遺(のこ)すのでないか。そう考えると、60年のキャリアに比べると決して多くない高畑勲の監督・演出の仕事、作品数も納得がいく。
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