ジブリ高畑勲監督がアニメ業界に遺した宝物

宮崎駿やガンダム監督にまで影響を与えた

訳書も多い。ミッシェル・オスロ『キリクと魔女』、ジャン・ジヨノ『木を植えた男を読む』、ジャック・プレヴェール『ことばたち』『鳥への挨拶』……。フランス語が達者な高畑監督ならではの作品だ。数々のテキストからは、音楽、文学、歴史、思想など高畑監督の知識が多岐にわたるのがうかがえる。高畑監督は卓越した知識人、そして思想家なのである。

アニメ業界の偉大すぎる指導者・高畑勲

高畑勲監督の代表作に『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』があることを意外に思う人もいるかもしれない。高畑監督は宮崎駿監督の両作品にプロデューサーとして参加している。プロデューサーの仕事は企画、作品のまとめあげ、さらに制作進行や資金調達に及ぶ。芸術家、思想家のイメージの強い高畑からやや遠い。しかしリーダーとして人を引っ張っていく役割は、彼のもうひとつの顔である。

宮崎駿監督は、長年の先輩である高畑を深く尊敬し、同時にライバル視してきた。その作品には高畑勲の視線がつねに意識されている。

『この世界の片隅に』で知られる片渕須直監督は、キャリアのスタートから高畑勲監督と多くの仕事をしている。その仕事に対する厳しい姿勢から多くを学んだと言う。片渕作品に貫かれるアニメーションのリアリズムは、高畑監督のそれと重ね合わせることができるだろう。スタジオジブリから巣立っていった多くのスタッフも、高畑監督から多くを学んだに違いない。

高畑監督の影響は、意外な人物まで及ぶ。『機動戦士ガンダム』で著名な富野由悠季監督は、30代の頃、『アルプスの少女ハイジ』で一緒に仕事をした高畑監督の知識と熱く議論をする姿に感銘を受けたという。高畑監督が亡くなった直後に行われたインタビューでは、「高畑さん、宮崎さん、鈴木さんには嫌がられるかもしれないけど、僕にとってもパクさん(高畑勲監督の愛称)は『師匠』だったんです」とまで語っている。

作品を生み出すため理論、理論の実践としての映画。それがほかの創作者に強い影響をもたらすのだ。

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