ジブリ高畑勲監督がアニメ業界に遺した宝物

宮崎駿やガンダム監督にまで影響を与えた

高畑監督の制作スピードは昔から遅かったわけでない。1960年代、1970年代はテレビシリーズも含め多くの作品にかかわってきた。一方、1990年代以降は、約60年の経歴から考えると意外なほど数が少ないフィルモグラフィー(関わった映画作品のリスト)となったのである。

高畑監督の映像表現、技術へのこだわりが、アニメーション制作に長い時間をかけるようになったのも理由のひとつだろう。『かぐや姫の物語』では、制作に8年かかったという。それにかかる予算と、見通せる収入のバランスが取りにくくなった事情もあったかもしれない。

しかしそれ以上に、高畑監督の活動と興味がアニメーション制作だけにとどまらなかったことは無関係でない。高畑監督と宮崎駿監督の違いに、アニメーター出身の宮崎駿監督と、絵を描かない高畑監督がある。宮崎駿監督の情熱は、長編・短編のアニメーション、さらに漫画まで及び、描くことが基盤にある。一方で高畑監督の情熱は、深く考えることに向けられる。それが監督・演出にとどまらない活動につながった。

著作家、思想家としての高畑勲

晩年にアニメーション制作が減っていった一方で、高畑監督の著書は少なくない。エッセイは特に多く、さまざまな文章をまとめた『映画を作りながら考えたこと』は高畑監督がいかにさまざまな場所で文章表現を続けたか垣間見える。著作テーマも独特だ。『漫画映画(アニメーション)の志―「やぶにらみの暴君」と「王と鳥」』では自らの原点となったフランス作品の制作の過程を追う。『一枚の絵から 日本編』『一枚の絵から 海外編』では、自らセレクションした絵画から作品世界を読み解く。

なかでも『十二世紀のアニメーション―国宝絵巻物に見る映画的・アニメ的なるもの』は、特筆すべき著書である。

画像は『十二世紀のアニメーション─国宝絵巻物に見る映画的・アニメ的なるもの─』 著/高畑 勲、編集・発行/スタジオジブリ、発売/徳間書店より

日本の古い絵巻をもとに、平安から現代までの日本の文化の二次元表現をひも付ける。日本の古い物語に対する傾倒は、『かぐや姫の物語』のアニメーション化にもつながったものだ。生前に『平家物語』こそアニメーション化するべきと、たびたび言及してきた理由もここにたどれる。

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