池上彰が解く「君たちはどう生きるか」の真髄 80年前の児童書が今もなお支持される理由
生きるために本当に大切なことはなんなのか
「この本は生きるために本当に大切なことはなんなのかを考えさせてくれる名著です」
池上氏はそう語る。原作は第2次世界大戦の始まる2年前に出版され、著者である吉野源三郎は雑誌『世界』初代編集長としても知られる人物だ。
「ざっくり言うと子どもに向けた哲学書です。今は現代版の道徳の書として読まれているのではないでしょうか」(池上氏)
主人公は加藤清史郎さん演じる旧制中学2年生のコペル君こと本田潤一、15歳。銀行員だった父親を早くに亡くし、父親に代わって相談役を買ってでたのが母親の弟で"無職でインテリ"の叔父だった。インテリで無職であるのには理由がある。『大学は出たけれど』という映画があるように、原作が出版された第2次世界大戦直前の日本は不景気だった。東京帝国大学を出ても就職先がないという人が当時はたくさんいたのだ。
「おじさん」は、潤一の鋭い視点に感心し、「コペル君」というあだ名をつけた。天文学者のコペルニクスからとった名前だ。
「こんな立派な人と同じ名前だなんてなんだか恥ずかしいよ。でも心のどこかで願ってるんだ。周りの人にどんなに間違っていると言われても自分の考えを信じ抜く立派な人間に僕もなってみたい」(コペル君)
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