池上彰が解く「君たちはどう生きるか」の真髄 80年前の児童書が今もなお支持される理由
「よくわからないけど、痛いって感じがしたんだ」
そうつぶやく浦川君は、なぜ自分を苦しめ続ける相手をわざわざ助けたのだろうか。
「一方的にやられるのがどれだけ寂しいか。周りの流れに勇気を出して逆らった浦川君は本当に立派だと思う」
これはコペル君の言葉だ。つまり浦川君は自分自身が悲しい体験をしたからこそ、いじめられる痛みを理解することができた。山口君にも同じ思いをしてほしくないと願っての行動だった。
ガッチンと浦川君の勇気ある行動に感化されたコペル君は、ガッチン、浦川君、水谷君の3人にこんな誓いを立てる。
「僕、ガッチンが(山口君の兄貴に)呼び出されたら一緒に行くよ。止められるかどうかはわからないけど、ガッチンの前で壁になる。絶対に逃げずにみんなでガッチンを守って戦おう」
正しい方向に向かうため人は悩む
それから2週間後、山口君の兄貴たちが仕返しにやってきた。約束どおり、浦川君と水谷君はガッチンの壁になる。3人は上級生の暴力に屈さず、友情を守りきった。
一方、コペル君は――。
偶然、その場を離れていたコペル君は、事態を把握しながらも隠れたまま出てこられなかった。上級生のゲンコツが怖くて足がすくんでしまったのだ。
傷を負った3人は手を取り合って立ち上がり、「悔しい」と泣いた。そして裏切り者のコペル君を無視してその場を立ち去ってしまうのだった。
「自分がこんなに卑怯な人間だったとは。死にたい――」
仲間を裏切ってしまった自責の念にさいなまれ、不登校を繰り返してしまうコペル君。
追い込まれたコペル君はあることを思いつく。
「そうだ、おじさんに仲裁役を頼めないだろうか。僕を許すよう説得してもらおう」
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