池上彰が解く「君たちはどう生きるか」の真髄 80年前の児童書が今もなお支持される理由

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物語の中心は「いじめについて」。主な登場人物は物静かな水谷君、男らしくガッチンと呼ばれる北見君、豆腐屋の長男で家業を手伝いながら幼い弟や妹の面倒を見ている浦川君、そしていじめっ子の山口君だ。同番組では、物語を要約した形でドラマ化しお届けする。

浦川君は、山口君からいじめの標的にされていた。豆腐屋のせがれであったことからお弁当のおかずがいつも油揚げだったからだ。山口君は浦川君の貧しい境遇をさげすむように「アブラアゲ」と呼んでからかった。

クラスメートは山口君の愚行をどう見ていたのか。実は「いじめられている浦川君を助けたい」というのが本音だった。しかし山口君には乱暴な男兄弟がいた。「文句のある奴は兄貴に言いつけてやる!」そう豪語する山口君にクラスメートはおびえ、抗うことができなかった。

時代は変われど、いじめの根っこの部分は変わらない。『教えてもらう前と後 池上彰と日本が動いた日「君たちはどう生きるか」SP』(TBSテレビ系、毎日放送制作)は5月1日(火)よる7時から3時間特番で放送します

いじめの背景にあったのは貧困や格差だ。現在、中学校は義務教育だがコペル君が通う旧制中学とは現在の高校にあたり、受験という難関を突破したエリートが通う狭き門だった。同級生の多くは有名な実業家や役人などの子どもばかり。そんな中、浦川君の存在は異色だった。家庭が貧しかったのだ。時代は変われど、いじめの根っこの部分は変わらない。

「今でいう『空気を読む』という同調圧力の概念は80年前にも存在した。読者は作中に描かれる『いじめっ子』『いじめられっ子』、当事者になろうとせずはたから黙って眺めているだけの『傍観者』のいずれかに自分を投影し、物語を自分ごと化するのではなかろうか。だからこそ世代を問わず、多くの人が共感するのではないでしょうか」(池上氏)

弱者と強者は一瞬にして入れ替わる

ある日、山口君のいじめを見るに見かねたガッチンが、いじめっ子に食ってかかる。

「誰が何と言ったって、もう許さん!」

それを見たクラスメートらはどう出たのか。ガッチンに賛同し次々と援護にまわったのだ。山口君とガッチンの力関係は一瞬にして逆転した。

ところが、「ガッチンに同調する流れ」にただ一人抗う者がいた。殴り合いのケンカを必死になって止めたのは、被害者であるはずの浦川君本人だった。

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