女性ジャーナリストは、なぜ爆殺されたのか マルタとアゼルバイジャンを結ぶ点と線

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(写真:REUTERS/Darrin Zammit Lupi)
マルタ共和国(以下、マルタ)のジョゼフ・ムスカット首相の汚職を追求し続けていたジャーナリスト、ダフネ・カルアナ・ガリツィア氏。昨年10月、自宅から自家用車で走り出した直後、仕掛けられていた爆弾によって殺害された。
こうした暗殺による真実追及の途絶を許さないジャーナリストによる連携プロジェクトが進んでいる。それがパリを拠点とするフォービドゥン・ストーリーズがコーディネートする「ダフネ・プロジェクト」。ロイターもこのプロジェクトに参加しており、本リポートはそのプロジェクトの成果の1つである。

[マルタ・ヴァレッタ(ロイター)] ― 2017年4月、マルタのあるジャーナリストが、「マルタのプライベートバンクが、アゼルバイジャンの得意先に便宜を図り、贈賄を行っている」という趣旨の記事を発表した。 その6カ月後、記事を発表したジャーナリスト、ダフネ・カルアナ・ガリツィアは爆殺された。

贈賄に関する主張も含め、ガリツィアの主張の多くはまだ証明されていない。銀行やそこで働く職員の疑惑を炙り出したガリツィアの記事と、彼女の死には関連性も証明されているわけではない。だが、彼女が見つけた重要な手掛かりが1つある。ピラトゥス銀行という名のこの銀行は、その事業の多くをアゼルバイジャン人のエリート達に依存していたのだ。

2つの消息筋が、ロイターに対して、銀行の取引についての詳細を打ち明けてくれた。

アゼルバイジャン指導部と密接に結び付いていた

ピラトゥス銀行が保有する2億5000万ユーロ(2億1800万ポンド)以上の預金の大部分を占める50以上の口座が、アゼルバイジャン指導部と密接に結び付き、アゼルバイジャン人への利益供与を目的として運用されたのだ。

先述の消息筋によると、同国大統領のイルハム・アリエフの2人の娘がトップを務める企業が最大顧客であったようだ。

アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領(写真:REUTERS/Denis Balibouse)

アリエフ大統領と2人の娘、レイラ・アリエヴァとアルズ・アリエヴァは、この件に関して沈黙を貫いている。

アゼルバイジャンの顧客の役割は、2016年に内密に作成された同銀行の規制報告で強調されており、この報告書は昨年、ガリツィアの手によってリークされた。在マルタの反マネーロンダリング監視機関である金融情報分析機関(FIAU)がピラトゥス銀行に送った報告書によると、同銀行は少なくとも主要顧客の2つを、「重要な公的地位を有する者(politically exposed person=PEP)」と位置付けていた。

欧州連合の規則では、PEPは政治家や政府高官またはその親族や同僚を意味する。いずれも、アゼルバイジャン出身者で構成されていた。

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