女性ジャーナリストは、なぜ爆殺されたのか

マルタとアゼルバイジャンを結ぶ点と線

報告書には、査察事例の多くでは、ピラトゥス銀行の顧客が「不動産投資を計画していたが、実際の購入証明は滅多に入手できなかった」と証言していた、との記載もある。この「顧客」がどの顧客を表すかは不明だが、「同銀行が顧客に投資用資金を貸し付けていた」と話した査察官もいる。

加えて、ピラトゥス銀行のプライベートバンキング部門トップが、アゼルバイジャンの2つの主要顧客(名前までは不明)と懇意にしていたことも明らかになった。マネーロンダリングのリスク調査を担当していた従業員は、上司との「内密な協議」後、査察官に複雑かつ大規模な取引についてを説明するだけで、「書面ではなく『握手』による借入契約が、お客様の文化です」と査察官に話したようだ。報告書は、これによって、「ピラトゥス銀行が、基本的なリスク低減措置を適用することなく、マネーロンダリング及びテロリズムへの資金供与という非常に高いリスクに曝されていることが明らかになった」としている。

ピラトゥス銀行は調査結果に異議を唱え、監査役を外部から招き、問題の対処にあたった。同銀行は取材に応じず、当件に関わった従業員に辿り着くことも出来なかった。FIAUは、リークされた文書の真偽については問わないとしている。

融資の返済

FIAUがピラトゥス銀行への査察を実施した後の2016年4月、FIAUは、同銀行のセキュリティ体制への懸念を表明した覚書を作成し、マルタ警察へそのコピーを送付した。

覚書は、ピラトゥス銀行内のシェンブリ氏(ムスカット氏の最側近)の口座に、「怪しい」5万ユーロが2度も支払われていた、と警告している。

その現金は、英領ヴァージン諸島にあるオフショア企業名義で、同銀行の別口座から振り込まれていた。オフショア企業の所有者は、マルタにおける「個人投資家プログラム」の会計士兼代理人で、このプログラムは、パスポート販売によって利益を出す政府の公式組織である。

「当該現金は、マルタ市民権申請のために、ロシア人3人が支払った申請手数料である」とFIAU側は述べている。ロシア人から「受け取った資金の大部分」はその後、「数か国で当該プログラムの促進を積極的に展開している首相府の首席補佐官である、キース・アレン・シェンブリ氏の個人口座に振り込まれた」。FIAUは、「マネーロンダリングを疑われても仕方がない」とし、その支払いは「違法収入」にあたる可能性があるとのこと。

取材に応じるブライアン・トンナ氏(2012年、「Times of Malta」のクリス・サント・ フォルニア氏撮影 / REUTERS)

この振込は、ブライアン・トンナ氏(シェンブリ氏から個人融資を受けた人物)からシェンブリ氏への融資の返済であったことが、双方によって公表された。

支払証明は調べたがトンナ氏とシェンブリ氏に対し聞き取りを行っていなかったFIAUは、覚書の中で、なぜ無利息の個人融資に英領ヴァージン諸島の企業が関与し、「そのような複雑で金のかかる構成」をしているのか疑問を投げかけた。また、FIAUは、その振込を「正当化させるため」に、融資契約を実際よりも遡って有効にさせた可能性があることを示唆した。

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