箱根・富士屋ホテルが再ブレイクしたワケ ”クラシックホテル萌え”だけじゃない

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――コンソメベースのカレーって普通なのですか?

いや、まず入れないですね、大変ですから。スープのメニューでポタージュとかクラムチャウダーはあっても、コンソメだけのメニューは、今、日本のホテルではほとんどないですね。プロであれば誰でもわかる話で、作るのに1週間かかりますから。

先だって、ある芸能人がメインダイニングルームにいらして、やはり懐かしかったのでしょう、コンソメを召し上がられたらしいんですね。「いやあ、おいしい」と言って、「これ食べたいのだけど、どうしたらいいの?」と言うので、従業員が「レトルトでしたら、同じ作り方のコンソメスープがありますよ」と答えたら、100個買って行きました。

――100個ですか! さすが芸能人。1個いくらですか?

伝説のビーフカレーとコンソメスープ。ホテルPBとしては驚異的な売り上げを誇る

700円です。

――じゃ7万円! そんなにおいしいんだ。ネット通販もされているのですか?

ええ。社のECサイトで。富士屋ホテル商品全部で300アイテムぐらいあります。富士屋ビールから、パンから、テディベアやせっけん、タオルまで全部合わせてですが。

――では、単館の売上高と比較しても、ネット通販だけでも結構な売上高になるのでは? 下のショップでも売れるでしょうし。

そうですね。今、いちばん売れているのは、コンソメを使ったレトルトのビーフカレーですね。昨年は年間で20万箱売れていますね。

――それはホテルPBのジャンルでもそうとうな数になるのでは。

たぶんそうだと思いますね。やはり一度メインダイニングでお召し上がりいただいて、おみやげにということで。近所の方が親戚用にと10~20箱お買いになるケースもあります。お泊りの方も、ランチで見えた方も買って行かれますね。

――レストランはみな自営ですね。それだけ食にこだわってこられた。

はい、直営です。やはりリゾートホテルでは、夜、外へ食事に行かれる方はいらっしゃらないですね。シティホテルですと10~30%がホテル内のレストランを利用されればいいくらいですが、私どもにお泊りいただく方ですと8割ぐらいがホテル内で召し上がられます。

あの格天井のメインダイニングルームで召し上がりたい、というリクエストがまずあります。いくら雰囲気や会場が立派でも、出される料理が「何だ」ということになってはいけない。私どもは社内で毎年コンクールを積極的に行ったり、若い料理人を毎年4カ月、フランスへ研修に出したりしています。

コンソメなど、富士屋ホテルの伝統的なレシピは守りつつも、日々変わりつつある新しいテイストは取り入れて融合させていく。日本人の舌も、新しい食材もどんどん入ってきます。飾りつけや盛りつけも変わっていきます。古い昔だけの姿でいいということではない、と思ってやっています。

(撮影:大澤誠)

 

筆者が手掛けた東洋経済オンラインのホテル連載が、電子書籍「1泊10万円でも泊まりたい ラグジュアリーホテル 至高の非日常」(小社刊)になりました。10万円以上するような部屋に泊まりたいと思わせるラグジュアリーホテルの魅力とはいったい何なのか。厳選9ホテルの総支配人たちが大いに語っています。

 

山川 清弘 「会社四季報オンライン」編集部 編集委員

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やまかわ・きよひろ / Kiyohiro Yamakawa

1967年、東京都生まれ。91年、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。東洋経済新報社に入社後、記者として放送、ゼネコン、銀行、コンビニ、旅行など担当。98~99年、英オックスフォード大学に留学(ロイター・フェロー)。『会社四季報プロ500』編集長、『会社四季報』副編集長、『週刊東洋経済プラス』編集長などを経て現職。日本証券アナリスト協会認定アナリスト、日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト。著書に『世界のメディア王 マードックの謎』(今井澂氏との共著、東洋経済新報社)、『ホテル御三家 帝国ホテル、オークラ、ニューオータニ』(幻冬舎新書)など。

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