ただ、それもこれも大前提に高コストがある。すごい額の寄付金、学費の収入が大きい。もし東大の学費を10倍にすることができたら、それはもういろんなことができる。コストをかければ解決する問題にたくさん直面しているからだ。おカネの勝負になったら、総資産4兆円のハーバード大学や総資産3兆円のプリンストン大学に東大は勝てない。もっとも勝とうとすることが正しいこととは思えないが。
むしろ東大は高コスト体質の道を歩まずに、いかに大学改革を進めるか。そのポイントが教育の充実だと思っている。
米国の大学は卒業するのが難しい?
──研究面の評価は。
研究については分野によって差があるので評価は難しい。東大が優れているところもあれば、プリンストン大が優れているところもある。たとえば東大には医学部があるが、プリンストン大にはない。法学部もない。前提の違いも大きい。研究について日本でも論文引用数や何やかやとよく議論されているし、そこはケース・バイ・ケースということで、その評価はあえてこの本では取り上げていない。
──どこもランキング好きです。
確かに大学も世界ランキングに翻弄されているところがある。そのこと自体は否定されるものではない。ただし、ランキングが意味する実態、特に教室の中で起こっていること、大学教育としてどうかなど、肝心な点について教育改革の中で日本の議論は希薄だ。
──米国の大学に対する迷信や幻想もたくさんあります。
たとえば米国の大学は入りにくく卒業もしにくいとよくいわれる。確かにトップ校の合格率は5~6%で、逆にいえば95%近くが落ちる。各高校の「上澄み」の優等生、日本でいう統一テストの点数がほとんど満点で、それにプラスしてバイオリン演奏で秀でるとかフットボールで全米優勝などといった特技が上乗せ評価される。
だから、入りやすいということは考えられない。しかしいったん入れば卒業はしやすい。確かに授業がとても厳しく、それで落とされていく連中はいるが、その一方でいろんなサポートシステムがある。国内の大学ランキングの指標に何年で卒業できたかという「定着率」があって、その指標クリアのためあの手この手で卒業させようと傾注する。
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