東京の名門校「武蔵」の生徒はムダから学ぶ 岩石薄片をひたすら削るだけの授業の意味

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まるで科学ミステリーのような授業が繰り広げられる(写真は筆者撮影)
名門進学校で実施されている、一見すると大学受験勉強にはまったく関係なさそうな授業を実況中継する本連載。第12回は東京の名門男子校「武蔵」を追う。

「オレたち、なんでこんなことしてるんだろう?」

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東京都練馬区にある私立武蔵高等学校中学校は、開成、麻布と並んで「御三家」と呼ばれる進学校である。

進学校でありながら、仏教漢文の暗唱、変体仮名の判読など、生徒が思わず「オレたち、なんでこんなことしてるんだろう?」とつぶやきたくなってしまうような授業がたくさんある。その筆頭として在校生の多くが挙げるのが、中1の「科学B」での「岩石薄片の作成と岩石・鉱物の偏光顕微鏡観察」という実験だ。授業を担当するのは川手新一教諭。理学の博士号も持っている。

「岩石薄片の作成と岩石・鉱物の偏光顕微鏡観察」とは要するに、顕微鏡で岩石を見てみようということ。

科学教材会社に注文すれば、岩石の薄片サンプルは簡単に手に入る。それを使えば、1時間で何十種類もの岩石の観察をすることができる。しかし武蔵にはこだわりがある。岩石を研磨して、薄片をプレパラートに固定するところから、自分たちで行うのだ。

そもそも自分たちが扱っている岩石が何なのか、生徒たちは知らない。薄片をつくり、観察し、それが何という岩石なのかを突き止めることが最終目的である。まるで科学ミステリーだ。

実験説明書の最後のページには「レポート提出期限:11月」とある。現在6月。この一連の実験におよそ半年をかけるのである。

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