創業140年の料亭が挑む「料亭文化」復活の道 接待減に老朽化…苦しむ18料亭が手を組んだ

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だが「新潟の高田というところの宇喜世という料亭のもので、かくかくしかじかで、100年以上の料亭を調べておりますが、お宅様の建物は100年前のままでしょうか?」などと言っても、まるで相手にしてもらえない。「何だ、それは? 今、忙しい。あとにしてくれ」とか、「冗談じゃない、40年前に建て替えましたよ」なとど言われてガチャンと電話を切られた。電話をしたらすでに廃業していたということもあった。これでは埒(らち)が明かない。大島氏は作戦を変えた。

「直接会いに行くしかない」

普通なら近場である新潟県内の料亭から始める。だが、それではインパクトがない。できるだけ遠くの料亭に突然アポなしで訪ねていこうと考えた。そうすればさすがに相手も少しは話を聞いてくれるだろうと考えた。

最初に訪ねたのが高知市の得月楼(旧名・陽暉楼)。宮尾登美子の小説を原作に映画にもなった、明治3(1870)年創業の有名な料亭だ。近所の人に何時頃なら主人がいるはずだと聞き、その時間になると門の前に行った。ちょうど雨が降ってきた。のれんをくぐった。

「あの、新潟県の高田から来た宇喜世という料亭の大島と申します」

すると主人がいた。

「あなた、どうしたんです。そんな雨でずぶ濡れで。さあ、上がりなさい」

こう言われて奥に通され、事情を話すことができた。

全国37カ所の料亭を回り、18店が仲間に

この調子で全国37カ所の料亭を自分の足で回った。3年後、努力のかいあって、北は青森県黒石市から、南は大分県中津市まで、18の料亭が仲間になってくれることになった。

こうして2016年9月、会員となった料亭の経営者を集めて、宇喜世にて最初の会合が開かれた。地域振興や訪日外国人観光客の誘致、歴史ある建物の修繕につなげようという試みが始まったのだ(なお百年料亭ネットワークに参加できる料亭の基準は、創業100年以上・料亭が築70年以上か、創業70年以上・築100年以上とした)。

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