創業140年の料亭が挑む「料亭文化」復活の道 接待減に老朽化…苦しむ18料亭が手を組んだ

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大正から昭和にかけて作られたと思われる大広間、故・高松宮殿下が来られた座敷などは、デザインの凝り方を見ても、往時の繁栄を偲(しの)ばせるものだ。

過去には高松宮殿下もここで過ごした(写真:筆者提供)

ただ、料亭の経営のほうはというと、近年厳しい状況が続いている。バブル時まではなんとかなっていたが、その後景気が悪化するにつれて悪化していった。官官接待が禁じられ、役所も企業も料亭で宴会を開くことが少なくなった。宇喜世のみならず、高田にいくつもあった料亭はしだいに減っていった。

金融機関には「壊してビルにしろ」と言われ……

高松宮殿下が過ごした座敷は、現在も残っている(写真:筆者提供)

「だから、僕が宇喜世を買い取ると早速金融機関が来て、壊してビルにしろって言ってきましたよ。100年以上の建物ですから、担保価値もまったくありません。でもおかしいでしょ? こんなすばらしい料亭に価値がないって」

こうした歴史ある街の歴史ある料亭を、やすやすとマンションやオフィスビルにしてはもったいない。だが、いろいろな娯楽、グルメがいくらでもあふれている現在、普通にやっているだけでは料亭は復権できない。それに建物自体かなり傷んでいる。修理だけでも相当費用がかかるが、その資金がない。悩んだ大島氏は、なんとか国に補助をしてもらえないかと国土交通省を訪ねたが、一企業に補助はできないと言われた。

金融機関からは壊してビルにするよう言われ、国からの補助もしてもらえなかった宇喜世。そこで大島氏は同様の悩みを抱えている全国の料亭と手を組むことにした(写真:筆者提供)

「じゃあ、どうすればいいんです?」と大島氏が聞いたところ、「古い料亭を維持しようという国民の盛り上がりが必要だ」というお答え。「私も国民ですが」と冗談を言うと、「そういうことではなくて、料亭文化、建物を残すべきだという国民の理解が必要だ、そのうえで議員に動いてもらうとか、そういうことがないと役所としては動けない」と言われた。

なるほど、ならば同じような悩みを抱えている全国の古い料亭、100年以上経営が続いていて、なおかつ建物も100年以上の料亭と手を組もう、そしてお互いの顧客を紹介し合ったりしながら、しだいに新しい顧客を増やしていけないか、と大島氏は考えた。

そこで大島氏は「百年料亭」という言葉を思いつき、登録商標を取った。そして全国に築100年以上の料亭がいくつあるかを調べ始めた。

ところが、資料がない。料亭の組合も、県単位であればないこともないが、全国組織はない。帝国データバンクでも調べたが、会社名からだけでは、料亭なのか、旅館なのか、そば屋なのか、わからない。

そこで次にパートタイムを1人雇い、全国の電話帳を北から南まで片っ端から調べ、料亭とおぼしきところを調べ出した。それをインターネットで調べると、100年以上の老舗かどうかがなんとかわかった。おおむね3000軒くらいの候補が見つかった。それから、ひたすら電話をかけはじめた。

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