若い女子を始めとして、老若男女が集う吉祥寺の一大人気スポット、ハーモニカ横丁(通称「ハモニカ横丁」)。戦後の闇市に端を発するものの、ほんの十数年前まではシャッター商店街だった。
それを現在の形へとよみがえらせた仕掛け人が、ビデオインフォメーションセンター社長である手塚一郎氏だ。古い店舗を次々と改装し、12店舗の飲食店をつくって新たな客を呼び込んだ。
ハモニカ横丁の仕掛け人が集めた「20の横丁の声」
そんな手塚氏が、最近『横丁インタビューズ コイケさん お願いがあります。』という不思議なタイトルの本を出した。同氏が長年続けてきた横丁関係者へのインタビューを、1冊の冊子にまとめたものだ。
これが超絶面白いのだ! 近年、横丁や闇市についてたくさんの本が出ていることは、本連載の「20代女性が吉原『遊郭専門書店』に集う理由」でも少し触れたが、それらの本の中でも出色の内容。東京の20の闇市、赤線、青線などの跡にできた横丁でずっとお店をやって来た人たちの生の声や昔のエピソードが実に迫力があって、笑えるし、しばしば泣けもする。都市の歴史研究においても、貴重な資料だ。
昔をしのぶエピソードをいくつか紹介する。
●吉祥寺
・終戦直後、今の吉祥寺駅前の紳士服店のあたりから東西に道があり、そこを荒縄で区切って店を出したが、夜になるとヤクザが「シャバ代」(※ママ)を取りに来た。
・売春も行われていたが、たまに屋根がどたどたいう。警察が踏み込むと、客と女性が屋根づたいに逃げたからだ。
・ある飲み屋では、サイパンのほうの空軍から仕入れたガソリンを一升瓶に入れて売っていた。水で割って酒として飲むとちゃんと酔っぱらえた。
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