産業別にみると、「新聞・出版・映像制作・広告制作業」や「法律事務所・会計事務所」「デザイン業・著述家」などは女性の生涯未婚率が特に高い。ここからわかるのは、正規職員としてバリバリ働いている女性ほど生涯結婚しない可能性が高くなりやすく、それも、映像や文字、文章や絵を使いこなし、専門的な資格や知識を持つ女性ほどその傾向は顕著なようです。
東大卒女性は高卒男性と結婚しない
なぜこうした状況が起きるのでしょうか。ひとつには、男女とも「同類婚」を求めがちという点にあります。同類婚とは、同じような学歴、収入、価値観同士が結婚したがる傾向です。大卒男子は大卒女子と、高卒男子は高卒女子とくっつき、年収についても、同じレベルの収入同士の男女がくっつくというものです。そもそも、出会いのきっかけが職場や友人の紹介だとするならば、そうした同類同士が結び付くというのはある意味自然かもしれません。実は、昨今の共働き志向の中で、この同類婚が進むと、世帯同士の格差が広がるという別の問題が発生します。この問題については改めてお話しします。
そして、もうひとつは、男性の「下方婚」志向と女性の「上方婚」志向です。男性は自分より低い収入の相手を希望し、女性は自分より収入の高い人を望む傾向があるわけです。これは、収入だけではなく、学歴にも当てはまります。
極端な例で説明すると、東大卒の男性は高卒女性ともマッチングされますが、東大卒女性は高卒男性とはほとんどマッチングされません。仮に、東大卒女性が高卒男性とマッチングされたとしたら、それは東大卒男性並みかそれ以上の収入を稼ぐ男性である必要があります。また、収入面だけで見ると、高年収男性は相手の女性の収入にはこだわりません。むしろ自分より低くあってほしいと希望します。
一方、高年収女性、たとえば1000万円以上稼ぐ女性の場合は、それ以上に稼ぐ男性しか眼中にないということになります。しかし、単純にそうした高収入の男性は無尽蔵には存在しません。人数に限りがあります。すると、年収の高い女性は対象者がいないという事態に陥ります。理論上、自分より収入の低い男性とマッチングすれば問題ないのですが、当の女性たちはそれをよしとしません。よって、前述したように、低年収男性と高年収女性が未婚のまま残るというわけです。
では、1980年代までの皆婚時代はどのようにして、ほぼ100%のマッチングが可能だったんでしょう?
まず、男女雇用機会均等法施行前であり、女性が総合職としてバリバリ働ける環境ではなかったことが挙げられます。自ら働いて経済的自立を果たす女性は少なかったし、女性にとっては、「結婚こそが人生最大の就職」という位置づけにされていたということがあります。極論すれば、女性にとって結婚とは「死活問題」で、「結婚をしないという選択肢はなかった」ともいえます。
さらに、当時は、結婚すれば性別役割分担が明確で、基本的に男性が家族を養うものという考えが常識でした。当然、そうした男性側の役割は、高度経済成長や年功序列・終身雇用というあの時代特有の「昭和の安定」に支えられていたものです。だからこそ、ほとんどの男性は結果として経済的に「下方婚」であり、女性は「上方婚」だったわけです。
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