いま世界は、「分断される社会」というテーマで揺れている。イギリスの欧州連合からの脱退やドナルド・トランプ政権の誕生を受けて、動向が注目される2017年のヨーロッパの政治情勢。オランダの総選挙やフランス大統領選では、反移民・反EU政策を取る政党・候補者の台頭が目立ったものの、オランダでは与党が政権を守り、フランスでは親EU派のエマニュエル・マクロン氏が勝利した。「分断」「対立」を乗り越えて、多文化が共生する社会は築けるのか。
それを考えるヒントとして、この記事では欧州の「民主主義教育」に着目する。ここでいう“民主主義”とは、自分で物事を考え、単なる多数決ではなく、違う意見を持つ人ときちんと対話を行い、そして皆で決めたことに対しては責任をもってコミットしていくという営みのことだ。
日本でも2016年から18歳選挙法が施行され、民主主義教育や主権者教育が注目されているが、“幸福先進国”と呼ばれるオランダやデンマークの民主主義教育はどのようなものなのか。教育現場を訪ねた。
オランダの「ピースフルスクール」の凄み
1970年代から移民・難民を積極的に受け入れてきたオランダ。たとえばユトレヒト市ではいまや200の国籍を持つ人々で市民が構成されており、文化の違いを原因とする大小の対立は日常的な課題でもある。そのオランダで、全国の小学校のうち約10%で導入しているのが、1999年に誕生した「ピースフルスクール」プログラムだ。