日本の「英語対策」は危うい方へ向かっている 翻訳は単なる単語の置き換えではない
2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピック。この成功には世界各国からやってくるアスリートや関係者、観光客のニーズに対応できる程度の語学力が不可欠だが、日本においては語学力の改善が必要なことはこれまでに何度も指摘されている。
実際、残念ながら日本人の語学力、特に英語力は先進国一と言えるほど低い。
2015年の報告書によると、日本のTOEICの平均スコアは46カ国中39位。日本の平均スコアは513点と、38位にランクインした香港 よりなんと16点も低い。経済大国かつ、アジアの文化的リーダーと言えるほどの国なのに、TOEICのスコアは、台湾(530点、37位)、中国(632点、24位)、韓国(670点、18位)から大きく後れをとっているのである。
日本が開催を勝ち取るうえでの最大のセールスポイントは、日本特有のホスピタリティ、そうおもてなしだった。2020年にそのセールスポイントを存分にアピールするには、訪日外国人とのコミュニケーションが不可欠になる。
日本人が英語を苦手とする根本理由
日本人が英語を苦手とする理由はいくつかある。1つは、英語を話す人たちとの文化的、歴史的つながりがなかったことだ。日本語は日本語族 (ジャポニック語族)の言語として分類され、その書記体系に関しては、中国語を大いに借用してきた。つまり、日本語は基本的には、英語を含むゲルマン系の言語とは、言語的・歴史的つながりをまったく持っていない。
日本や近隣国で第1言語として英語を話す人は極めて少なく、また、異なる文化間で絶えず交流があるヨーロッパなどと違い、日本は文化的接触の観点からは比較的孤立している。言語と文化は密接に関連しているため、文化的文脈やネイティブ話者が少ない日本では、英語は基本的にビジネスや外交のツールとしてしか使われてきていないのである。
日本における英語学習法も、実は英語を学ぶうえでの障壁になっていると感じる。多くの教育者は、数学を教えるのと同じようなアプローチで英語を教えている。つまり、単純に文法や単語、リスニングといったそれぞれのスキルを向上させることによって、英語力を向上させようと考えているわけだが、実際には、言語はその言葉が話されている地域の文化や歴史と密接に絡み合っている。文化的文脈がなければ、言語は無機質なものとなり、心がないものとなってしまう。
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