日本の「英語対策」は危うい方へ向かっている 翻訳は単なる単語の置き換えではない

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このことは、通訳や翻訳の世界にも言える。日本人の多くは、日本語から英語への通訳や翻訳を、単なる単語や文章の他言語への「置き換え」とみなす傾向がとても強い。

たとえば、「電車に注意」を「please be careful of the train」と訳してしまう地下鉄の警告文は、文字通りの、単語対単語の翻訳としては間違いではないものの、英語を話すネイティブから見ると馬鹿げているし、英語を話す国では絶対に使われることのない言い回しである。直訳するより、「train approaching」などの自然な表現にするべきだろう。

また、日本語では感情を表現するために形容詞を多用する。たとえば、食事中に「美味しい」と大きな声を出すことは日本では非常に自然なことだが、同じことを英語でやった場合、正気ではないと思われるほどおかしい。なぜなら、日本の文化的文脈の外では、これはとても奇妙に聞こえるからだ。しかし、英語の授業でこういうことを教わることはまずない。

英会話学校が抱える根本的な問題

言語とは有機的なものであり、その文化と密接に絡んだ構造になっている。それぞれの言語は、文字や単語などの表面的レベルを超えるアイデアを概念化する要素を含んでいるのである。

英会話は、表面的側面に過度に重点を置く、外国語習得の最たる例だろう。英会話学校は、英語力を身につけるうえでの効果は極めて限られているにもかかわらず、今でも日本のあちこちにある。

こうした学校の最大の目的は利益を上げることであり、生徒の英語力を上げることにはない。実際、多くの学校は教える資格を持っていない(しかし安く雇用できる)外国人スタッフを「教師」として採用している。生徒の多くも、習った英語を使うのはせいぜい海外旅行くらいだ。

日本が文化・外交的に孤立してきたことは、日本人独特のものの考え方、ひいては、英語に対する考え方にも影響している。日本人には、家族・友人対他人、日本人対外国人など、「ウチ」と「ソト」の概念が強く染み付いている。

次ページこの発想を英語に置き換えてみると・・・
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