「教育技術」で子どもの成績は向上するのか 米国の学校で導入進むエドテックの実力は
米国では近年、「EdTech(エドテック)」と呼ばれる業界が爆発的に成長している。Education(教育)とTechnology(技術)を組み合わせた造語であるエドテックは、最新技術を教育に取り入れようとする動きで、オンラインを活用した学習方法などがこれに含まれる。
2016年だけでも、エドテック業界には138社存在し、総額10億3000万ドルもの投資が行われた(ちなみに2015年にはこれより多い14億5000万ドルが集まった)。2017年、こうした企業の多くは1000億ドル以上の利益をたたき出すだろうと見る投資家もいる。同業界には、企業価値が10億ドルに上るiチューターグループなど大企業から、学校の先生が立ち上げたスタートアップまでがひしめき合い、しのぎを削っている。
ペンギンキャラが数学を指導
「米国の小学校から高校までの一貫校は、年間100億ドルもの資金を教育向けのテクノロジーに費やしている」と、米ブライトバイツの創設者兼CEOのロブ・マンカベリ氏は話す。同社は教育機関にデータや教育ツール、教員の教育サービスに関する情報を提供している。英調査会社フューチャーソース・コンサルティングは、米国のエドテック市場は2020年まで年率4.5%で成長し、2020年には市場規模18億ドル(約2000億円)に膨らむと見ている。
そこで今回は、エドテックを積極的に取り入れている学校と、テクノロジーはまったく取り入れていない学校、それぞれの教育方針とその成果を取材した。
ワシントン州シアトルにあるベインブリッジ学区は先頃、テクノロジーのアップグレードに向こう4年で220億ドルが必要だとの予算案をまとめたばかりだ。同地区でカリキュラムと指導要綱作成の担当補佐を務めるシェリル・ベルト氏は、エドテックは学力や成績向上につながると胸を張って言う。そこで、彼女が例に挙げたのは、最近のお気に入りである「スパティアル・テンポラル・マス(STマス)」という神経科学から生まれた算数向けの学習ソフトだ。
ゲームをベースとした同学習ソフトは、視覚的な学習法により算数に対する理解度と熟練度を上げることを目的としている。ジジというアニメ風のペンギンのキャラクターを使い、生徒が障害を乗り越え、数学の問題を解く手助けをする。生徒が問題を理解したら、ジジはより難しい問題へと生徒を導いていく。