「教育技術」で子どもの成績は向上するのか 米国の学校で導入進むエドテックの実力は
こうした中、エドテックは生徒に悪影響を与えると指摘する教育者も出てきている。シュタイナー教育を実践するワシントン州のマドローナ・スクールのミッシー・ゴス校長はその1人で、同校では授業でエドテックを利用していない。
シュタイナー教育では、学校外でのテレビ、映画、ビデオゲーム、その他の電子機器などのメディア使用を禁止、または制限するという強固な方針がとられている。これは、自信に満ちあふれ、人生を最大限に生かせるバランスの取れた器用な人間に育てるという学校方針に不可欠なのだという。テクノロジーの助けを借りずに、生徒が自ら目標を設定し、それを達成できるまで我慢できる強い意志を持った生徒を育てたいと同校では考えている。
生徒を世界の「醜い部分」から遠ざける
同校の幼稚園ではパンを焼いたり、小学校6年生のクラスでは2次元のアイデアを3次元で表現したりといったことが行われている。生徒はこのほかにも、編み物やおもちゃの作り方から、木や石の掘り方まで学ぶ。
教室には「安っぽい」ものは置かれておらず、生徒たちは高品質のウールやシルクなどの素材や、プロ向けのアート用品を使って作品を作る。これによって、美への意識を高めようという狙いだ。
興味深いのは、生徒を、世界の「醜い部分」から遠ざけることによって、美意識を高めようと考えていることだ。マドローナでは、子どもが人生の早い段階から皮肉的になることをよしとしない。このため、同校では20世紀の戦争や惨事を学ぶ前に、人生の最もいい部分を学ぶ。保護者に対しても、ニュースや暴力的な映画、テレビ番組を見させないように勧めている。
「子どもたちが世界に飛び込むのは、好奇心を持ち、自分の価値観を築いてからでいいと考えている」とゴス校長は話す。
テクノロジーの利用を制限しているもう1つの理由についてゴス校長は、人生のペースを遅らせることにあると説明する。実際の人生は、スマホをクリックして先に進むようなスピード感では進まない、というのがゴス校長の言い分だ。