福井信英
先週の連休は、実家のある富山に帰った。
小学校の教師である母と食事をしているときにこんなことを言われた。
「今、採用活動の早期化って問題になっとるがやねー。学校の勉強が邪魔されて、大学の先生達って大変じゃないけ。確かに問題やと思うわ。(富山弁)」
母の意見はもっともであるし、大人の多くが感じる至極当たり前の感想ではあるが、採用活動の早期化の問題は「問題の範囲」を適切にとらえなければ、今起きている好ましい動きを阻害することにもつながりかねない。
本来であれば、今回のコラムは前回に引き続き「エントリーシートの書き方」について述べるはずだが、「エントリーシートの書き方」に関してはまた後日触れるとして、今回はこの問題について考えたい。
先日、大学生の就職活動の開始時期が早すぎるとして国立大学協会、公立大学協会、日本私立大学団体連合会の大学三団体は、日本経団連や全国銀行協会、リクルートなど137団体・企業に対し、「青田買い」とも呼ばれる採用活動早期化の是正を求める要請書を提出した。
確かに、大学3年生や院1年生の大事な時期に授業や研究を休んで、就職活動を行うというのは、問題があるだろう。しかし、現在起きている様々な企業側・学生側の動きを「採用活動の早期化」という言葉ですべてひとくくりに片付けてしまうと、問題の本質を見誤ってしまう。
今、起きている現象は「採用活動の早期化」と、「学生のキャリアに対する意識の高まり」という二つの現象に分けてとらえたほうが適切だし、建設的な意見を出すことにつながる。
バブル崩壊以降、社会全体の先行きが不透明になり、将来に対するリスクが大幅に増した。大企業であっても潰れる会社があるし、20代の上場企業取締役が生まれることもある。入る会社によって生涯賃金が1億や2億違ってくることもざらで、得られる幸せも大きく変わってしまう時代になっている。
会社選びの重要性は年々高まっているのだ。
もちろん、「入る会社はどこでもいいじゃないか。入った会社で精一杯力を発揮し、貢献し、自分自身が求める環境を作り上げていけば」そう考える人もいるだろう。
しかし、現実にそれができる人はごく一部にすぎず、合理的に考えた場合、入る会社をちゃんと選んだ方が自分自身にとっても会社にとっても望ましい。
会社選びで格段に重視されてきているのは、自分自身の能力を高められ、その能力を最大限発揮できる環境を選ぶ(探す)ことだ。
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