このことをスポーツに例えるとこうだ。
プロスポーツ選手はたいていコーチをつける。これは、自分の潜在能力を引き出してもらうためで、自分に合うコーチは自分で選ぶ。
また、団体スポーツでは、自分がワンマンで活躍できるチームか、それとも、ライバルひしめく名門チームか、自分の能力をより発揮できるチームを選ぶのは自分の仕事だ。
つまり、スポーツ選手のコーチやチーム選びと、就活学生の会社選びは似ているのだ。
将来のリスクに備え、自らの力を見つけ、伸ばすために、現在は大学3年生、院1年生の多くが夏前からキャリアについて考えたり、夏の間にできるインターンシップを探し始める。企業はこれらの学生のニーズに応える「場」を用意する。
これは、「採用活動の早期化」というよりは「キャリアに対する意識の高まり」と考えた方が適切だろう。自分自身が保有している力は何か、自分自身の力を伸ばせる環境はどこか、自分自身の力を発揮できる環境はどこか、などと考え、行動している結果であって、決して不適切な状況ではない。
企業側が行っている活動の多くも、業界理解・仕事理解のためのインターンシップやセミナーであって、これ自体はたいへん望ましい活動といえる。
これらの活動が「採用活動の早期化」という言葉でひとくくりにされ、非難の対象となるのは避けなければならない。
一方、面接など、より直接的な採用活動によって、大学の授業や試験が阻害されるという事態はおおいに問題だ。これらは、「採用活動の早期化」として、大学側から是正を求めるのは適切な行為だと思う。
この要請を受け企業側も、「現在大学4年、院2年の4月以降に採用活動を行う」という倫理憲章が強化される方向に進むのだろうが、採用活動のスタート時期を遅らせても、学生の「キャリアに対する意識の高まり」の流れは止めることができないし、止めることは社会の停滞や後退を招くことにもつながりかねない。
大学側からの要請を真摯に受け止めるのであれば、企業が主催する学生向けのセミナーやインターンシップは、休日や平日の遅くなど、大学の授業と関わりのない時間帯に行うことが適切ではないだろうか。現在の倫理憲章にしても、授業が始まる4月に採用活動の一斉スタートをするよりは、多くの大学で試験が終了する2月にスタートした方が、相互にとって都合が良いだろう。
本来、教育機関と学んだことの実践機関である企業は、相互に補完し合う関係のはずだ。社会を理解し、仕事を理解することで、教養をつけ、学び、能力を磨かなければいけないことに気づく。そして、大学はこれらを身につけるための「場」を提供する。今はその好ましい循環を生み出すための調整期間だ。学生の間に「キャリア教育に対する健全な欲求」が生まれつつあり、企業と大学が協力してそれに応えようとしている。
だからこそ、「採用活動の早期化」と「キャリアに対する意識の高まり」という現象に関してはしっかりと切り分けて考え、それぞれに対して健全な解決策を見つけなければならない。
慶應義塾大学在籍中にジョブウェブと出会い、インターンシップ生として働き始める。
大学卒業と同時に(株)日本エル・シー・エーに就職。経営コンサルタントとして、学校法人のコンサルティングに取り組んだことをきっかけに、2003年3月に(株)ジョブウェブに転職。
現在、新卒事業部の事業部長として、企業の採用活動のコンサルティングや学生を対象とした各種リサーチ、教育研修コンテンツの作成に取り組む。
1977年生まれ。富山県出身。
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