冒頭で触れたビジネス誌では、保険会社が見込みで設定している積み立て部分の運用利率が3%である点を「予定利率の高さも見逃せない」と評していましたが、注視すべきは、3%での運用が持続する場合でも、10年間はつねにマイナスになることではないでしょうか。
契約後、何%で運用できるかどうかは不確かなことであるのに対し、多額の手数料等が発生することは確かなことなのです。筆者が加入を勧められている顧客であれば、10年間、3%超の費用がかかるのは明らかに不利、とみなして敬遠したいと思います。
そもそも、死亡保障に要するおカネや手数料等の諸経費が、どれくらいかかるのか、すべて開示しておくのが筋だと思うのです。たとえば、投資信託では、運用期間中に発生する費用が0.2%程度の商品もあるのだから、仮にも1%を超えているような場合は、利用しないほうが賢明だ、といった判断がしやすくなります。情報開示がなされないのは、自慢できる水準ではないからではないでしょうか。
販売側の都合で生まれた商品?
情報が乏しい状況で、一般の人が、諸経費について考える際には、パンフレットにある「加入から1年後の払戻金」を確認すると良いでしょう。運用実績が0・3・7%のいずれの場合でも、払込保険料24万円に対し1万円となっています。「マイナス23万円から始まる積み立てが、将来の資金準備に有利だろうか」と立ちどまってみてほしいのです。
加えて、変額保険の説明に「ありがちな間違い」も、知っておいていただきたいと思います。保険料を投資信託などで運用するため「投資の基本」が語られるなか、留意すべき点があるのです。
まず、国内外の株式や債券に「長期・分散」して投資することが推奨されます。現実的な選択肢だと納得できます。ただし「長期にわたり分散投資するとリスクが少なくなる」といった説明は誤りです。長期になるほど、成果のバラつきが小さくなるのは当り前のことだからです。
筆者は野球が好きなので、各チームの勝率について、週単位で着目すると10割や0割もあるのが、月単位では7~3割くらいに収まり、シーズン単位では5割前後に落ち着くようなもの、と理解しています。「観戦の機会を増やすと、応援しているチームの勝率が上がる」わけではないのです。
積み立て投資の場合、5年より10年、10年より30年投資するほうが、リーマンショックのような事態に出合う機会は増えるはずです。年長者ほど多くの天災を体験しているだろう、と想像するとわかりやすいでしょうか。
ビジネス誌には「長期にわたって分散投資を行うのでリスクは格段に少なくなる」という記述がありました。ファイナンシャルプランナーや金融ジャーナリストでも同じ誤認をしている人がいるので要注意です。
次に「時間の分散」がすすめられます。一定額を定期的に投資する「ドルコスト平均法」と呼ばれるやり方です。多額の資金を持たない個人には、なじみやすいと思います。とはいえ、最終的に投資対象の価格が値下がりしている場合、成果はマイナスに終わるようなこともあるため、特に有利な手法というわけではない、という認識も不可欠です。
その点に関して、本稿で取り上げた商品のパンフレットには、「ドルコスト平均法の注意点」として、損失を防止する投資法ではないと明記してあり、筆者は好感を持ちました。
それにしても、死亡保障の確保と積み立て投資を1つの商品で行う理由はどこにあるのでしょうか。筆者は、つまるところ、販売側の都合によるものではないかと見ています。保障と投資の2つの機能が合体することで、保険料に多くの経費が含ませやすくなり、顧客が負担する高い経費は販売側の高収益につながる、というわけです。金融商品にかかわる人たちの「利益相反」について改めて考えさせられます。
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