パントマイム歴40年の男が説く「やりきる力」 情熱はすべてを動かす原動力になる

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行き詰ったときは、そのまま道を歩むのではなく、別の道を進むのでもなく、その道の原点に立ち返る

藤倉氏:そうした先輩方のご恩のおかげで、ぼくはいつしか、憧れたパントマイムの世界で生計を立て、結婚もし、テレビ出演も増え、幸せな日々を送っていたのですが、実は一度、それらをすべて失ってしまったことがあるんです。

それは20年間パントマイムでも私生活でも、パートナーだった当時の妻との結婚生活が破たんし、離婚したことが原因でした。精神的に病んでしまい、不安感から来る不眠、体重の増加と、身も心もぼろぼろになってしまいました。自分が進んできたパントマイムという道を歩いているうえでの出来事だったので、何事もなかったかのようにその道を歩み続けることもできないし、ほかの道に進むこともできないという、八方ふさがりの状況でした。

状況を救ってくれたのは母の教え

――順風満帆だったはずの生活に突然の嵐。どうやって溺れずに這い上がっていったんでしょう。

藤倉氏:そうした状況を救ってくれたのは、子どもの時に母がぼくに言ってくれた「どうしても行き詰まった時はアカデミア(学問の道)に進め」という言葉でした。そのまま道を歩むのではなく、別の道を進むのでもなく、その道の原点に立ち返る。ぼくにとってその原点はカンジヤマ・マイムが生まれた場所、アメリカ。そこに再び渡って、演劇、特に「教育演劇」という比較的新しい学問で博士課程を修めることが、ぼくの次に進む道だと思ったんです。

名もなきころから築き上げた日本での経験、仕事をすべて整理し、一からまた何十年分逆戻りのような状況に戸惑いはありましたが、踏み出すことでしか状況を打開することはできませんでした。40歳を超えての思わぬ再挑戦で、今思い出してもつらい時期でしたが、すべてを失って体当たりで進んだ結果、どん底と思われた状況は、結果的にまた、今のカンジヤマ・マイムに欠かせないものとなったのです。ウィスコンシン大学演劇科の博士課程を無事に修了できただけでなく、この時に執筆した日本の教育演劇に関する英語の博士論文が、アメリカ 教育演劇協会より日本人初の最優秀論文賞を受賞するという栄誉にも恵まれました。

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