セルジオ越後「15歳久保はまだ何者でもない」 無理やり「スター」を作る日本の報道は異常だ
――15歳の高校1年生にして先日、FC東京のトップチームデビューを果たした久保建英選手に関する報道が過熱しています。セルジオさんはどう感じていますか?
最近、スポーツ新聞を開くと、毎日のように久保君の名前を目にしますね。でも、まだプロ選手としての実績があるわけではなく、将来有望な選手のひとりにすぎないわけですから、明らかに騒ぎすぎでしょう。ポテンシャルの高さは一目瞭然ですが、まだ何者でもありません。しばらくの間、見守ってあげるべきだと思います。
「久保フィーバー」に覚えた強い違和感
――久保選手の経歴を簡単に振り返ると、小学4年だった2011年にFCバルセロナ(バルサ)の下部組織の入団テストに受かり、川崎フロンターレの下部組織から移籍。順調にステップアップしていましたが、バルサが18歳未満の外国人選手獲得・登録違反を犯し、久保選手も公式戦に出場できなくなったために2015年に帰国。FC東京の下部組織に加入しました。
昨年は中学3年ながら飛び級でFC東京U−18に昇格。さらにトップチームに2種登録され、FC東京U−23の一員としてJ3デビュー。今年4月15日のJ3、セレッソ大阪U−23戦でゴールを決めると、5月3日のルヴァンカップ、北海道コンサドーレ札幌戦でトップチームデビューも果たしました。
久保君が4月にJ3でゴールを決めたときの報道を見て、僕はすごく違和感を覚えました。かつて森本貴幸(当時・東京ヴェルディ/現・川崎フロンターレ)の樹立したJリーグ最年少ゴール記録を塗り替えたことが、強調されていたからです。確かに久保君は15歳10カ月11日、一方、森本は当時15歳11カ月28日。でも、森本のゴールはJ1でマークしたもので、価値や重みがまるで異なります。事実を伝えるなら、久保君のゴールはJ3であること、森本はJ1でのゴールだったことまでしっかり触れるべきでしょう。
同じようなことは、トップチームでデビューしたときにも感じました。どこもかしこも「J1公式戦デビュー」と報じていました。これを見聞きすれば、サッカーに詳しくない人なら誰もがJ1のリーグ戦でデビューしたと思いますよね。でも、実際にはJ1のリーグ戦ではなく、J1リーグのチームが参加するルヴァンカップでのデビューです。
このとき、僕が思ったのは「ああ、また始まったな」ということでした。「すごい、すごいと騒いでのスター作り、アイドル作りが始まったな」と。
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