セルジオ越後「15歳久保はまだ何者でもない」

無理やり「スター」を作る日本の報道は異常だ

日本ではよくマスコミのことを「マスゴミ」なんて言います。でも、マスコミは国民が求めているものを報じるわけで、マスコミの報道はいわば国民の願望やレベルを映す鏡なんですよ。

久保君を報じれば、それを求める人がいて"売れる"から、マスコミが飛びつくわけです。国民がしっかりとした目を持っていれば、久保君フィーバーなんて起こらないわけなんです。

――久保選手は5月20日に韓国で開幕するU−20ワールドカップに出場するU−20日本代表にも、飛び級で選出されました。

楽しみですね。確かに飛び級ではあるけれど、代表メンバーに選ばれた以上、年齢は関係ないし、チームを率いる内山(篤)監督も、経験を積ませるために呼んだわけではなく、戦力となり得るから呼んだはずです。久保君自身にとって、世界における自分の現在地を測る良い機会になると思いますね。

ヨーロッパでも南米でも、17、18歳くらいでトップチームのレギュラーとして活躍している選手はざらにいるし、それくらいの年齢でもブンデスリーガの強豪クラブで堂々とプレーしている選手はいます。そういった選手たちとどこまでやれるのか。ただ、この年代のトップクラスの中には、すでにA代表に選出されていて、U−20ワールドカップに出場しない選手もいます。

久保はまだ「将来のスター候補」の1人でしかない

――日本と同じグループのイタリアのGK、ACミランに所属する18歳のジャンルイジ・ドンナルンマも、今回のU−20ワールドカップには出場しません。

そうなんですよ。彼は16歳のときにセリエAデビューを果たし、17歳のときにイタリア代表デビューを果たした本物のスター選手。それに対して久保君は、あくまでも「将来のスター候補生」にすぎないわけですから、われわれは、期待しながらも成長を見守るというスタンスでいないといけない。

もし、今大会で久保君が大活躍してチームを上位に導いたり、その後にJ1デビューを果たしてゴールを決めたりしたら、そのとき初めて大きくニュースにすればいいんです。18歳になったらバルサに戻ることを希望しているという報道もあるようです。そうだとすれば、本当の勝負はバルサに戻ってから。

――バルサでの競争環境は本当に厳しいと言われます。

バルサには、これまでに「メッシの後継者」「イニエスタの後継者」として期待された選手がたくさんいたけれど、ほとんどの選手がトップチームに定着していない。ひと頃騒がれたスペイン出身のボージャン(・クルキッチ)やメキシコ出身のジオバニ・ドス・サントスも、バルサに定着することができませんでした。バルサで成功するのは、本当に難しいことなんです。

たとえば、先月、卓球のアジア選手権で17歳の平野美宇ちゃんが優勝しました。それで彼女にマスコミが集まるのは、当然のことなんですよ。なぜなら、彼女は世界ランクのトップクラスにいる中国の選手たちを倒して、結果を出したから。作られたスターではなく、本当のスターだからです。

それと比べると、久保君はまだ結果を出していない。この先もっとすばらしい選手になる可能性はすごく秘めています。でも、まだ何者でもないんですから、彼のためにも騒ぎすぎては良くないと思います。彼が大きな目標に向かっているのであれば、今はマスコミも国民もみんなが静かに見守ってあげるべきです。

(文中一部敬称略)

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