日本はスポーツで「稼ぐ」国に変われるのか 「スタジアム・アリーナ改革」の目指す針路

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プロ野球を通じた「まちづくり」プロジェクトを進めている横浜スタジアム。スタジアムやアリーナを起点にして、スポーツ産業の活性化につなげる動きが各地で盛んになっている(写真:共同通信社)

「これからは、スポーツで稼ぐ時代だ」

今から約1年前の2015年10月。こう宣言したのは、スポーツ庁の初代長官にして、ソウルオリンピックの100メートル背泳ぎ金メダリスト、鈴木大地氏。同庁の幕開けに際して、鈴木長官自らが今後の日本スポーツに必要不可欠な視点を力強く示して見せた。

鈴木長官の言葉からすると、これまでの日本でスポーツは「稼ぐ」対象ではなかった、ということになる。こう聞いて意外に思う人も多いだろう。何しろ、プロ野球などのプロスポーツの観戦を楽しむ人は家族や会社、身の回りを見渡すとあちこちにいる。しかし、全体を見てみると確かに、鈴木長官の指摘したとおりなのだ。

 国内のスポーツビジネス市場は、10年で2割も縮小

日本でスポーツと言えば、長らく、主に学校教育や「体育」の中に位置づけられてきた。だから、人々の間では「自分でおカネを払ってまで取り組んだりするものではない」という意識がまだ根強い。地域で行われるスポーツをみても、週末に子どもたちにサッカーを教えるボランティアのコーチなどにも「スポーツで稼ぐのはあさましい」という遠慮めいた価値観がいまだに残っている。

だからこそ、冒頭の言葉には、オリンピックの金メダリストとして、スポーツの価値を知り尽くした鈴木長官の「空気を変えたい」という思いが込められている。

鈴木長官がスポーツに対する価値観を様変わりさせたいと考える理由、それは、このままではダメだ、という危機感と無縁ではないはずだ。2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を控えている日本。だが、あろうことか、スポーツ業界の市場規模が縮小しているというショッキングな事実があるのだ。

日本政策投資銀行が2015年にまとめた統計によると、日本のスポーツビジネスの市場規模に当たる2012年の国内スポーツ総生産(GDSP)は、11.4兆円。

以前、早稲田大学スポーツビジネス研究所が試算した2002年時点のGDSPを、日本政策投資銀行の統計と比較可能な形に修正すると14.8兆円であった。つまり、2002年から2012年の10年間で3兆円超、割合にして22%もスポーツビジネス市場が縮小してしまったという計算になる。

市場が縮小したと述べたが、そもそもスポーツビジネスと聞いて何を思い浮かべるだろうか。毎年、この季節になると年俸更改などが話題になる野球やサッカーのプロスポーツは、誰もがまず思いつくところだろう。スポーツ用品の製造、販売などもイメージが湧きやすい。ただ、実はスポーツビジネスの裾野は、それ以外の領域にも広がっている。

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