プロ野球「戦力外」あの松坂世代に訪れた現実 引退も現役続行のこだわりも重く尊い決断だ
華やかなプロ野球の世界。活躍した選手には名誉と莫大な報酬がもたらされる一方で、競争に敗れ、表舞台から去りゆく選手がいる。そんな「戦力外通告」を受けた選手をドキュメンタリーで描いてきたのが、TBSテレビの『プロ野球戦力外通告~クビを宣告された男たち』だ。
12月30日(金)夜10時~に通算13回目の放送を迎えるこのシリーズ。プロ野球選手の姿は特別な存在ではなく、不況の中では誰の身にも起こりうる“究極のリアル”でもある。今年の放送を控え、番組にかかわるサイドストーリーを取材班が3回にわたってリポートする。第1回は、あの「松坂世代」が直面した戦力外の厳しい現実だ。
甲子園のスーパースターが受けた「戦力外通告」
球団から携帯電話に連絡が来たとき、すぐにその報せだとわかった。新垣渚(36)は今秋、所属する東京ヤクルトスワローズから戦力外を通告された。
九州共立大学を卒業後の2003年に投手としてダイエーホークス(現ソフトバンク)に入団。最多奪三振をマークした2004年から3年連続で2ケタ勝利を挙げた。その高速スライダーは当時のチームのエースで沢村賞に2度選ばれた斉藤和巳も賞賛したほどの球だった。
だが、課題のコントロールは思うように改善されず、勝ち星は減っていった。右肩を痛め、2009年は未勝利。2014年途中、ヤクルトへトレードに出され、新天地でも制球難がネックとなり今年の戦力外通告に至った。
野球ファンなら新垣の華やかなる高校生時代を覚えている人も少なくないだろう。沖縄水産高校時代、1998年夏の甲子園では当時高校生最速となる151㎞/hを記録した。新垣と同世代には後にプロの世界で活躍するスーパースターが居並んでいた。その中心を成したのが松坂大輔だ。
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