プロ野球「戦力外」から這い上がった男の心魂 このメンタリティは一般社会にも深く通じる
このテストの結果で、その後の人生が決まるという試験会場の控え室。大勢の受験生と一緒にいると想像して欲しい。あなたなら次のどのタイプになるだろうか?
「ものすごく集中してるけど、うつむいてナーバスになってる人。とりあえず受けてみて受かればいいなと楽天的に考えている人。俺はこれに懸けてどうにかして受かりたいんだって雰囲気の人。だいたい3つくらいのパターンに分かれていましたね」
1年前は野球人生の「どん底」にいた
自ら置かれていた緊迫した状況を、そう冷静に振り返る男がいる。中日ドラゴンズの八木智哉投手、32歳。ちょうど1年前、彼はプロ野球人生を懸けて、一発勝負のトライアウトのマウンドに立とうとしていた。オリックスから非情の戦力外通告を受け、まさに野球人生の「どん底」にいた八木。そのトライアウトのロッカールームで、上記3タイプの選手を目の当たりにして、彼はある行動に出た。
「なんだか、ロッカーから出たくなったんですよ。あの場に居られなかった。外野に行ってギリギリまで体を動かしたり、ブルペンの雰囲気を見に行ったり。音楽聴きながら自分のリズムを作っていましたね。抑えるか打たれるかで、生き残れるか生き残れないかの空間じゃないですか。勝負をするわけだから、ロッカーで他の選手とは喋りたくなかったんです」
八木が回顧するロッカーの様子。プロ野球合同トライアウトの熾烈な舞台裏は、そんなピリピリとした空気感に包まれていたのだった。