プロ野球「戦力外」から這い上がった男の心魂 このメンタリティは一般社会にも深く通じる
「プロで10年間過ごすと、いろんな人がクビになっていったのを見て来ました。実際に僕もクビになりましたし。それって、いつか来ることじゃないですか。その時に大事なのは、クビになるまでに自分がどれだけ頑張って来たかっていうことだと思うんです。これだけやってきた、っていう選手はみんないい顔をしているんですよ。トライアウトを受けてダメでも、何とか仕事探して頑張るわ、みたいな吹っ切れた感じ。ですけど、クビになるまでに全力でやってなかった選手は、トライアウトを受ける前から不安そうだし、終わった後にも不安そうだというか。だからもう顔色も全然違いますし。中途半端な人ほど、いろんな愚痴を言うというか。ポジティブというのか分かりませんが、僕はやることをやったら、あとは人生なるようにしかならないと思っているので」
「明るく元気でいれば、周りの空気まで変えられる」
このメンタリティは、プロ野球の世界だけでなく一般社会で戦う、学生や社会人にも深く通じることではないか、そう八木に問いかけるとこんな興味深い答えをしてくれた。
「やっぱりネガティブは最大の敵だと思いますね。僕もそんなにメンタルが強いわけじゃないですけど、どれだけ自分の脳をだませるかというか。自分の脳を上手にだませば、いいイメージにいくと思うし。ピンチの時にヤバイ、どうしようって方向にいったら余計マイナスになって打たれてしまうし。結果がどうあれ、どれだけポジティブにいられるか。明るく元気でいれば、周りの空気まで変えられると思いますね」
2014年の八木同様に、2015年もまた多くの選手が戦力外通告を受けてトライアウトに挑んだ。投手33名、野手14名。その中で現役続行の切符を手にしたのは、わずかに3名のみ。そんな熾烈な状況を描く『プロ野球戦力外通告』に対して、八木はこんなことを思っている。
「戦力外と背中合わせ、そんな不安定な立場のプロ野球選手からするとあの番組は、自分はクビにならないように頑張ろうって思わせてくれるんです。あれを見てみんな、また来年1年間必死に結果を出そうって」
そしてポジティブな八木らしく、最後にこう付け加えた。
「もちろん今年も番組は見ますよ。それが終わったら、昨年の自分が出た録画をまた見ると思います。僕のやつは本当にドラマチックですからね(笑)」
(敬称略、文:津川 晋一)
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