日本はスポーツで「稼ぐ」国に変われるのか

「スタジアム・アリーナ改革」の目指す針路

そこで再び、鈴木大地長官である。「われわれの仕事は、『スポーツで稼いでいいんだ』という空気を醸成すること」。2016年2月、スポーツビジネスの活性化を図るために、経済産業省と連携して「スポーツ未来開拓会議」を立ち上げ、政策方針の策定を開始。これは、その最初の会議で飛び出た言葉だ。

その後、スポーツ未来開拓会議では、2016年6月に中間報告をまとめて、「(公営競技と教育分野を除いた)5.5兆円 のスポーツ市場を2020年で10.9兆円、2025年で15.2兆円に拡大」することを目指す方針を打ち出している。

その実現に向けては、いくつかの課題や取り組みが示されているが、大きな柱のひとつと言えるのが「スタジアム・アリーナ改革」である。公的資金を投入して整備、運営してきたわが国のスポーツ施設は、赤字経営の施設が多く、コストセンターになっているという認識の下、スタジアムやアリーナをスポーツ産業の活性化に向けた「核」のインフラとして、観戦者側の視点や収益性の面から改革していこうというものである。

すでに具体的な動きも始まっている。

NTTグループは、大宮アルディージャのホームスタジアムである「NACK5スタジアム大宮」で、目の前の試合と連動した動画配信などを行う「スマートスタジアム化」に着手し、先進技術を使った新たな観戦スタイルの提供に取り組む。

新潟県長岡市の「アオーレ長岡」は、JR長岡駅から直結で、プロバスケットボールの会場にもなるアリーナと市役所、市民ホール、シアターなどが一体となった、これまでのスポーツ施設像を覆す交流空間だ。横浜DeNAベイスターズと横浜スタジアムは、「コミュニティボールパーク化構想」を立ち上げて、プロ野球を通じたまちづくりに取り組んでいる。

2002年から2012年の10年間でスポーツビジネス全体の市場規模が縮小する中、プロスポーツなどの「興行」は、2.3倍に成長した。今年7月には、Jリーグがスポーツに特化したライブ中継サービス「DAZN(ダ・ゾーン)」を展開するパフォームグループと、10年で2100億円の放映権契約を締結。今年9月には、プロバスケットボールの「Bリーグ」が華々しく開幕するなど、活況を呈している。

スポーツビジネスの枠を超えた成果も期待

新たなスタジアムやアリーナがエンジンとなって、プロスポーツなどの興業を活性化し、日本のスポーツビジネス市場全体を牽引していくようになったら大きな成果だ。もちろん、それにとどまらず、経済波及効果も含めて、日本経済全体の活性化につながっていくようだと理想的だ。

そのためには、施設を所有する自治体、運営する運営者、利用する興行主催者(プロスポーツチーム)、さらには、周辺のステークホルダーを巻き込み、スタジアム・アリーナを核とした「まちづくり」を実現し、エリア全体としての集客力を高めることが必要だ。

スポーツ施設やプロスポーツチームは、全国に点在している。各地でその取り組みが拡がれば、全国に波及効果をもたらすだろう。そう考えると、スポーツを原動力にした全国的な地方創生も、決して夢物語ではないのだ。

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