ところが2013年秋、アリタリア航空はまたもや危機に陥る。しかし、株式25%を持っていた当時筆頭株主だったエールフランス–KLMが増資の誘いを断ったことから、イタリア郵政など国内企業がつなぎの支援を実施。その後、新たな提携先を探す必要が出てきた。
救いの手を差し伸べたのは、中東・アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビを拠点とするエティハド航空だった。翌2014年6月、エティハドはアリタリア航空の株式49%を取得することで合意した。
エティハド航空が、歴史的に赤字続きだったアリタリア航空への出資に踏みきった理由は明確だ。
中東の新興会社が老舗に出資したワケ
ペルシャ湾岸には、同じUAEのエミレーツ航空(ドバイ)やカタール航空といった急成長する新興キャリアが、自社の運航拠点を「世界的な航空ハブ」として優位に立たせるためにしのぎを削っている。しかしエティハド航空は、エミレーツ航空やカタール航空と比べ、就航都市や保有する機材の数で劣っている。早急な業容拡大のために、アリタリア航空のような一定規模の路線網を持つ既存航空会社に出資するという手に出たわけだ。
エティハド航空はかねて、いわゆる航空同盟(アライアンス)には加盟せず、同社が「エクイティ・アライアンス」と呼ぶ中小の航空会社に出資攻勢を重ねることで、自社のネットワークを拡大する方針を進めている。
アリタリア航空への出資以前にも、ドイツ2位のエアベルリンをはじめ、インドのジェットエアウェイズ、さらにエア・セルビア、セーシェル航空などに出資しており、これらの航空会社は「エティハド・エアウェイズ・パートナー」の名の下、同一航空会社便のように特別な通し運賃で利用できるようになっている。
一方、一時は筆頭株主だったエールフランス–KLMは、アリタリア航空がエティハド航空の資本参加を受けたことで提携のメリットがないと判断。増資にも応じなかったことから、相対的に出資比率が低下。2015年時点での出資比率は1%未満に減っていた。
エティハド航空がアリタリア航空に出資を決めた2014年の夏、その後の4年間に12億5000万ユーロ(当時のレートで約1730億円)を投じると明言。一方で従業員2500人の削減を求めるなどの再建策を実施し、2017年中の黒字転換を目指すとの目標を打ち出した。
しかし、環境は厳しかった。
アリタリア航空はその後も格安航空会社(LCC)や国内を走る高速鉄道との競争にもまれ、体力をどんどん落としていく。まずはLCCとの競争。2008年に破綻寸前まで達した際、アリタリア航空は国内線の権益を複数の航空会社に放出したが、その結果、現在は欧州の2大LCCであるライアンエアー(アイルランド)と英イージージェットもイタリア国内路線に参入。アリタリアとシェアを食い合うようになっていた。
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