一方、高速鉄道を見れば、旅客輸送が自由化されたことで、イタリア国鉄傘下のトレニタリアがローマ、ミラノ、ベネチアなどを結ぶ高速列車「フレッチャロッサ」を走らす一方、民間事業者が運営する「イタロ(italo)」が幹線ルートを走っており、空だけでなく陸でも旅客シェアの取り合いで激戦が繰り広げられている。
これら外的要素が重なり、アリタリア航空は黒字を実現するどころか、機材と人員をともに削減したとしても赤字から脱することができない袋小路に迷い込んだ。同社は2016年秋の段階で「1日当たり50万ユーロ(6000万円強)もの赤字を重ねている」とも報じられている。
存続なのか清算なのか
これまでに5億6000万ユーロを出資したエティハド航空は昨年秋以降、アリタリア航空に対して人員削減を要求するなど、徹底した改革策を打ち出している。しかし、乗務員らの労組の動きは芳しくなかった。この4月下旬には、存続のための資本増強を行うために必須とされた人員削減策を拒否。結果として、同社幹部は新たな資金繰りは無理と判断、破産申請の手続きが進められることになった。
とりあえずイタリア政府は、同社便の運航自体は続けられるように一時的なつなぎ融資は実行するとしながらも「公的資金の投入はしない」と明言。一方で、政府任命の管財人の下、資産売却や人員削減、路線の譲渡などを含む事業の縮小を行い、2年以内に再建との目標を掲げている。しかし、資産を売却するといっても、アリタリア航空には自社購入の機材はなく、すべてがリースであること、また人員削減はこれまで労組の反対に遭い、順調には進んでいないなど、再建への道は険しい。一部の事業をほかの航空会社に売却するとの案も浮上しているが、現在まで具体的な結論には達していない。
エティハド航空による投資も破産申請を受け「水の泡」と消える可能性も出てきた。ローマとミラノをハブに、欧州での地盤を固めようとしたエティハド航空の戦略は大きな見直しを図らなくてはならなくなっている。
今後の再建策の実施いかんによっては、日本との直行便が打ち切られる可能性がないとも言えない。
これまでも再建策の一環として、2015年3月28日からの夏ダイヤ施行に合わせ、「成田-ベネチア便」と「関西-ローマ便」が同時運休の憂き目に遭っている。今残っている直行便は、「成田-ローマ便」、「成田-ミラノ便」の2ルートでいずれもデイリー運航を維持している。
ユネスコの世界遺産で、登録件数が最も多い国はイタリアだ。日本でつねに「行きたい国」の上位にランクされるイタリアへの足が今後も維持されるのか。アリタリア航空再建の行方には注視する必要がある。
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