テロに揺れる欧州だが、大勢の観光客が訪れる国イタリアの人気は衰えていない。そんな旅行先として人気が高い同国へ日本からの直行便を飛ばす唯一の会社であるアリタリア航空が5月2日、破産手続きの申請を行った。管財人の管理下で運航を継続しているものの、再建に失敗した場合には清算される可能性も浮上している。
過去10年は破綻と救済の繰り返し
ローマ法王が外国へ訪問する際のニュース映像には、アリタリア-イタリア航空(以下、アリタリア航空)の飛行機から降り立つシーンが使われることが多い。第2次大戦後間もない1947年の創業以来、同社はイタリアのフラッグキャリア(国を代表する航空会社)としての存在感がある。
しかし、経営面では継続的に厳しい状況が続いており、創業してから70年もの間、年ごとの決算で黒字を計上したことがわずか数回しかない。存続の危機に立たされたことは1度や2度ではなく、「ついにアリタリア航空も終わりか」という局面に達しながらも政府や民間の救済を得ながらなんとか生き延びてきた経緯がある。
アリタリア航空は破産申請を行ったものの、運航は当初のスケジュールどおりに継続されている。ゴールデンウイークに同社便を使ってイタリアなどを訪れた人々も無事に帰国できたことだろう。目下のところは、「イタリア政府が任命する管財人の下で、コスト削減や人員削減などに取り組み、2年以内に再建する」との目標を定めることで混乱を最小限にとどめる努力を行っている。
アリタリア航空は前述のとおり、芳しくない経営状況のまま長年運航が続けられてきた。2008年には、政府から巨額のつなぎ融資を受けながらも結局、いったんは破綻。政府が持っていた同社の株式49.9%を、複数の大手金融機関をはじめ、バイクメーカーのピアッジオやアパレルのベネトンなどから成る国内の投資家連合に売却するかたちでどうにか清算を逃れた。いわばこの時点で「民営化」したわけである。2009年には、同業大手であるエールフランス–KLMがアリタリア航空株の25%を取得。その後数年間は赤字ながらも同社グループの支援の下で運航を続けて来た。
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