「おもてなし」という言葉の本当に大事な意味 相手の心に寄り添うことが最も大切だ

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私自身は人を家に招き、たいしたことはできませんが、「おもてなし」をすることが好きです。これは、私が多くの人が出入りするお寺で生まれ育ち、檀信徒(だんしんと)の方やお客さまがお越しになった際は、必ずお茶を入れお菓子を用意してお迎えさせていただくことに慣れ親しんできたことに由来しています。しかし、この思いはアメリカ生活を経て、自身では輪をかけて強くなった気がします。

当時、よくホームパーティーに招待され、主催者がすべて準備するのではなく、出席者が一品ずつ持ち寄る気軽なポットラックパーティーに参加するなど、幾度となくパーティー文化に触れる中で、広がる人と人との繋がりや、相手を思いやる場に素晴らしさを感じていました。

「おもてなし」の意味

「おもてなし」とは、客に対する心のこもった接遇、歓待、サービスなどを意味する言葉です。「おもてなし」の「もてなし」は「持て成し」と書き、以下の4つの意味を持ちます。

① 「待遇:客に対する扱い」
② 「接待:客に出すご馳走」
③ 「態度:人や物事に対する振る舞い方」
④ 「処置:物事に対する扱い」

この「もてなし」に、丁寧の「お」をつけて、「もてなし」の行いに丁寧な真心を加えたのが「おもてなし」という言葉になります。

一般的に「おもてなし」は英語で「hospitality」と表現されます。これは「思いやり」や「喜びを与えること」を意味し、適切な表現ではないかと思います。しかし、時として「service」と訳されることがありますが、これは報酬を目的とし対価を意識した言葉であり、日本語の「おもてなし」の英訳としては適切とは言えない気がします。

しかし、私は「hospitality」という表現にも若干の違和感を持ちます。もちろん、他に表現する英単語がないので仕方がないのですが、日本語の「おもてなし」には、「hospitality」という単語だけからは感じられない、何かもう少し深い意味が込められていると思うのです。

その深い意味とは、「応病与薬」(おうびょうよやく)という言葉に通じています。これは、医者が患者の病気に応じて薬を与えることですが、実は仏が教えを受ける人間の性格、適性、能力、要求などに応じて法を説くことに喩えたものです。この場合、病気は煩悩を指し、薬は法を指します。(このようなことから、仏を医者の王と言う意味で「医王」と呼ぶこともあります)

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