「最盛期1328人→現在47人」ある限界集落の歴史 「007」ロケ地、鹿児島県南さつま市・秋目の歩み

前回の記事では、人口47人の限界集落で営業を続けてきた宿「がんじん荘」の舞台裏を取材した。その中で見えてきたのは、人が少なくアクセスに苦労する場所において、その土地でのニーズに応えられうる限り全力で対応し続けてきた多角経営の姿勢だった。
「がんじん荘」のある鹿児島県南さつま市坊津町秋目は、ハリウッド超大作でありジェームズボンドが活躍する『007は二度死ぬ』のロケ地として知られている。さらに時代をさかのぼると、鑑真和尚が上陸して仏教が伝わった港であり、藩政下は密貿易で栄えたような痕跡が随所に残る謎めいた土地でもある。

そこで今回は、「がんじん荘」と秋目の魅力と歴史に迫りたい。人が減り、学校は廃校になり、限界集落になった秋目だが、独特の魅力で今なお訪れる人の心を惹きつけている。
かつては“よそ者”だった
「がんじん荘」の歴史は、今宿がある場所に1921(大正10)年、上塘さんの祖父母が加世田から移り住んだのが始まりだ。
「じいちゃんたちは“よそ者”じゃないですか。だから一番端っこの場所に店を構えたみたいです」
「一番端」というのに驚いた。「がんじん荘」は国道226号線に面している。海岸線に沿って延びる国道226号線は景色のよいドライブロードとして知られており、「がんじん荘」は表通りに面しているような立地だ。しかし、この道路が整備されたのは後の時代のこと。入植当時、ここは集落の端っこだったのだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら